トランプ関税戦略、路線変更の意味(上):「世界経済の作り直し」に乗るが、市場急変で交渉に転換

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政権内に相互関税の戦略的な位置づけに関して“深刻な食い違い”が存在したことは明らかだ。だが、アメリカでは大統領の権限は絶対である。食い違いはトランプ大統領によって一気に解消された。その様子を『The Washington Post』が詳細に報じている(4月9日付「The 18 hours that changed Trump’s mind on trade」)。わずか18時間で、相互関税に対するトランプ大統領の考えが完全に変わってしまったのである。本記事を参照しつつ、出来事を整理してみよう。

共和党内、支持者から路線変更求める声

3日の株価暴落、金利急上昇、大幅なドル安でも、ナバロ顧問など相互関税の立案者たちは、「世界経済を再構築し、何世代も続いてきた国際化を一掃するトランプ大統領の試みは絶対に揺らぐことはないと信じていた」。ホワイトハウスのスタッフは「ウォール・ストリート(金融界)はメイン・ストリート(産業界)を理解していない。メイン・ストリートは大統領を依然として支持している」と語っている。

彼らは「大統領は世界経済を作り直そうとしている」と信じ、そのために相互関税政策を作り上げた。そしてトランプ大統領も、その壮大に計画に乗ったのだった。

4月3日の夜、市場の混乱を見たトランプ大統領は「人々は少し気分が悪くなっているようだ」とコメントしている。共和党の有力議員たちも、相互関税に懸念を感じ始めていた。グラハム上院議員はトランプ大統領に「最終決定は大統領がすべきだが、多くの人はなんらかの成果を上げることを求めている」と、“泥沼の貿易戦争”に突入するのを避け、実利を得るよう求めた。

クルーズ上院議員は「政府は2つの選択肢がある。相手国の関税を引き下げるように説得する手段として利用するか、発表通りに実施して、他の国から報復されるかだ。後者を選べば、恐ろしい結果になる。アメリカに害をもたらすだろう。迅速に1つか2つの国と大きな通商交渉を行うべきだ」と、トランプ大統領に現実路線への復帰を求めた。

共和党支持者からも路線変更を求める声が上がった。700万人のフォロアーを持つ保守派のコメンテーターのベン・シャピロ氏は「関税は本質的にいいもので、アメリカ経済を強くするというのは間違っている。製造業の大規模な復活につながるというのは真実ではない」と、相互関税は誤りだと公然と指摘している。

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