トランプ関税戦略、路線変更の意味(上):「世界経済の作り直し」に乗るが、市場急変で交渉に転換
『ニューヨーク・タイムズ』は、4月9日付「From ‘Be Cool!’ to ‘Getting Yippy’ Inside Trump’s Reversal on Tariffs」で「最終的に大統領にコースを変えさせたのは市場だった。トランプは本能的に行動した」と指摘している。さらに同記事は、ベッセント財務長官チームとバンス副大統領は「中国を悪者として孤立させ、他方でトランプが貿易不均衡打開に本気で取り組んでいるというメッセージを送ることに焦点を当てたより計画的なアプローチを取ることを推し進めていた」と伝えている。
ナバロ上級顧問やミラン大統領経済諮問委員会委員長などの強硬派は完全にはしごを外された格好だ。関税交渉の主役は現実派のベッセント財務長官に移った。
電子部品に弱み、中国に“白旗”
トランプ大統領の“後退”はさらに続く。4月11日の夜、税関・国境警備局がスマートフォン、パソコン、半導体製造装置、SSDなどの電子機器を相互関税の対象から除外すると発表した(4月5日に遡って適用)。対象製品には中国製品も含まれる。
貿易からの中国排斥を目指していたトランプ政権が、なぜ中国製品を相互関税の対象から除外したのか。ホワイトハウスのレビット報道官は記者の質問に対して、「トランプ大統領は、アメリカは半導体やチップ、スマートフォン、ラップトップ・コンピューターなど重要なテクノロジーを生産するのに中国に依存することはできないことを明らかにした」と答えた。意味不明だが、「トランプ大統領はアップルやTSMC、エヌビディアにハイテク製品をアメリカ国内でできるだけ早く生産できるようにするよう指示した」と続けているので、「アメリカはハイテク製品を作れない」ということを間接的に表現したものである。
この措置に対し世界が安堵の息をついたのもつかの間、13日にラトニック商務長官はスマートフォンなどの電子機器は半導体関連に課する分野別関税の対象になると述べた。半導体関税は1~2カ月後に導入される見通しと報じられているが、アメリカのハイテク作業の中国依存度の高さを考えると、関税率はそう高くはならないだろう。
そして、強硬な反中国派で知られるナバロ上級顧問が13日のNBCニュースで「私たちは中国に交渉への参加を呼び掛けた。トランプ大統領と習主席はいい関係にある」と語っている。これは実質的にトランプ大統領が中国に“白旗”を掲げたに等しい。
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