トランプ関税の効果と決定の内側(下)関税引き上げの最終目標は所得税廃止。「恐怖戦略」成功なら次の標的は通貨

トランプ大統領は選挙期間中、“グローバリスト”と呼ばれる自由貿易派を批判し、アメリカ産業の衰退はグローバル化にあると支持層に訴えてきた。「製造業を取り返し、再びアメリカの黄金時代を作る」という公約を実現する手段の1つが相互関税の導入であった。では、アメリカ国民はナバロ、ミランがイデオロギー的信念で立案したトランプ関税を評価しているのだろうか。
2024年7月29日に発表されたPew Research Centerの世論調査では、59%のアメリカ人は「貿易でアメリカは得るものより失うものが多い」と答えている。共和党支持者に限ると、その比率は実に73%になる。これは2021年の調査結果よりも8ポイント増えた。大卒などの高学歴者でも47%が同様な回答をしていて、とくに国際貿易で中国がより多くの利益を得ていると考えている。こうした世論が、トランプ大統領の過激な政策立案の下地になっているといえる。
世論調査の関税引き上げへの賛成率は40%弱
『Daily Mail』が行った世論調査は、相互関税導入によりトランプ支持率が上昇したことを示唆している(2025年4月5日、「Americans deliver shock verdict on Trump’s controversial new tariff」。調査期間は3月31日~4月3日、関税政策の発表は4月2日)。支持率は1週間前の49%から53%へ上昇、18~29歳の若い層では18%から29%へと11ポイントも増えている。無党派層と民主党支持層でもそれぞれ6ポイント上昇している。関税政策に関しては賛成が36%、分からないが36%、反対が28%だった。意見が割れているのは、政策の影響が出てくるまで正確な評価はできないためであろう。
一方、4月6日に発表されたロイター通信とIpsosの世論調査(調査期間は4~6日)では、関税引き上げについて賛成は39%に対し反対が57%、共和党支持者も25%が反対だった。ただ52%が「外国は貿易でアメリカを利用している」というトランプ大統領の主張に賛成している。
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