トランプ関税の効果と決定の内側(下)関税引き上げの最終目標は所得税廃止。「恐怖戦略」成功なら次の標的は通貨

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しかし、所得税について保守派の経済学者は、国民が懸命に働いて得た所得から徴税するのは政府による収奪だとしている。また、ノーベル経済学賞を受賞したミルトン・フリードマン教授が「累進所得税率」を批判し、「単一所得税率(flat tax rates)」の導入を主張したように、保守派の経済学者は累進課税を不公平とみなし、その廃止を訴えている。富裕層の減税も一連の流れにある。これに対してリベラル派は、累進所得税は所得の再配分を果たし、社会的平等を実現する手段であるとし、真っ向から対立する。

保守派の経済学者は、最終的に所得税を廃止し、関税と消費税を基盤とする歳入構造の実現を目指す。消費税は資源を使った割合に応じて税金を納めるので、人々の勤労意欲を殺ぐものではないからだ。

「所得税を関税に置き換える」

『CNN』は、2024年10月27日付の記事(「Trump floats ending the federal income tax. Here’s what that would mean」)で「選挙運動の最中、トランプ大統領は社会保障給付、残業手当に対する課税の廃止を約束した後、最大の歳入源である連邦所得税の廃止を目指しているとほのめかした」と書いている。

『Fox News』のインタビューでトランプ候補(当時)は「1800年代、アメリカは賢明な国だった。アメリカは豊かな国だった。すべての連邦歳入は関税であった。所得税はなかった」と語っている。数日後、記者に「所得税を関税に置き換えるのか」と聞かれ、「当たり前だ」と答えた。トランプ陣営の顧問は「所得税の廃止は将来の“野心的な目標”になる」と付け加えている。

現在、関税収入は連邦政府歳入の2%で、所得税に取って代われるか疑わしいが、少なくともトランプ大統領は連邦所得税が国民を搾取するものと考えている(アメリカの9州は州所得税を課していない)。今回の異常ともいえる関税の引き上げの背後に、こうしたトランプ大統領の認識がある以上、関税問題が交渉で落ち着いたとしても、いつまた蒸し返されるかわからない。

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