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地球温暖化は社会経済階層間の学力格差を拡大させる。日本の小中学生の学力テストの結果でも猛暑による影響が確認された

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小学校の教室
(写真:OrangeBook/PIXTA)
気鋭の経済学者が研究成果を解説するオープンプラットフォーム。【水曜日更新】

今年も暑さの厳しい夏になりそうだ。今や多くの学校にエアコンが設置される時代だが、その普及以前、子どもたちは暑い教室で授業を受けていた。夏の暑さが学習成果に影響することはなかったのだろうか。

近年、暑さが人間の認知能力や生産性に及ぼす影響の分析が進んでいるが、多くの研究は試験日の気温と成績との関係など、その場限りの「即時的」な影響に着目している。そこで東京大学の重岡仁教授と筆者は、小中学生を対象とした学力テストの個票データを利用し、授業中の暑さがその後の学習成果へ「蓄積的」に与える影響の分析を試みた。また暑さによる被害について、全体の平均的な影響だけでなく、社会経済階層間の違いに着目し、格差への影響も分析した。

授業中の暑さと子どもの学習成果との関係に着目することは、次の3つの点で重要である。第1に、子どもは身体および脳の発達の未熟さゆえ温暖化をはじめとした環境ストレスに対し、とくに脆弱である。第2に、子どもの頃に受けた被害は、教育達成や労働市場での成果など長期的に悪影響を及ぼす可能性がある。第3に、学校における学習環境の整備は、温暖化の被害を軽減する方策の中でも政策介入を行いやすい。

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