
日本の大学が岐路に立っている (写真:Abimanyu/PIXTA)
いま、日本の大学は構造的な転換点に差しかかっている。
全国には約800の大学があるが、そのうち約8割は入学定員1000人未満の小規模大学であり、その多くが私立大学だ。都市部か地方か、学部構成、偏差値帯、歴史、財務基盤──大学を取り巻く環境は多様であり、一律に語れるものではない。しかし、ほぼすべての大学に共通するのは、「これまでの延長線上では立ち行かない」時代が来ているという事実だ。
大学が直面する危機の構造と改革の方向性について、教育・研究・経営・組織という多面的な観点から、隔週で全10回にわたって掘り下げていく。大学をはじめとする教育機関の改革に第一線で関わってきたアクセンチュアの実務家たちが現場での知見と課題認識をもとに、大学の「リアル」と「これから」を言語化していく。
初回となる本稿では、日本の大学に広がる危機を「構造的課題」として捉え直し、その本質を明らかにしていく。
少子化は“背景”でなく構造的危機の起点
あなたが50歳なら、1975年生まれの同学年人口は約190万人。だが2024年の出生数は70万人を割り込んだ。わずか50年で3分の1にまで減少した。この落差は、大学の運営基盤を根底から揺さぶるものだ。
一方、少子化の進行にもかかわらず、大学進学率は右肩上がりを続けている。2024年度の4年制大学への進学率は59.1%。一見すると高等教育は堅調に見えるが、それは進学率の上昇によって絶対数の減少を補っているだけで、大学進学者の実数は減少に転じ始めている。
マーケットが縮小していく中で、約800ある大学は、減り続ける18歳人口の奪い合いに巻き込まれている。

トピックボードAD
有料会員限定記事
無料会員登録はこちら
ログインはこちら