トランプ関税の効果と決定の内側(下)関税引き上げの最終目標は所得税廃止。「恐怖戦略」成功なら次の標的は通貨

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ホワイト・ハウスのイデオロギー派であるナバロとミランは外交交渉を否定していて、前述のようにトランプ大統領も関税に関する基本的な考えは彼らと同じだ。違うのは、トランプ大統領にとって重要なのは、目先の成果であり、自らの名声であるということだ。「90日間」が交渉のための期間であるのは間違いない。

関税を課される側にとって大切なのは、その交渉が公正に行われるかどうかだが、悲観的にならざるを得ない。

通商で「恐怖戦略」成功なら、次の標的は通貨

『The Hill』はトランプ大統領の関税戦略を「DARVO」と呼んでいる(4月9日、「Trump’s tariff gaslighting has a name: It’s DARVO」)。DARVOとは心理学の用語で、 「Deny(否定)」、「Attack(攻撃)」、「Revers Victim and Offender(犠牲者と攻撃者を逆転させる)」の頭文字を合わせたものだ。

事実を否定し、相手を攻撃し、責任を転嫁し、批判者を黙らせ、加害者と被害者の立場を逆転させる、を意味する。同記事は「トランプと彼のチームが何年も事実を歪めるために使ってきた戦略である」と指摘する。

まさにトランプ大統領は通商政策でこの戦略を使っている。アメリカとの貿易への依存度が高い国ほど、国益の犠牲を最低限にするため、正論を主張せず、トランプ大統領の嘘を受け入れることになりそうだ。このままでは、「トランプの恐怖戦略」が成功し、アメリカに一方的に有利な国際的な通商の枠組みが出来上がる可能性がある。

思惑通りに通商交渉が成功すれば、トランプ大統領の次のターゲットは通貨だろう。ミランは「アメリカの貿易赤字の根源は恒常的なドル高にある」と述べている。将来、1985年の「プラザ合意」のような大幅な通貨調整を迫ってくる可能性も十分予想される。

想像以上にトランプ大統領は狡猾な人物かもしれない。

中岡 望 ジャーナリスト

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なかおか・のぞむ / Nozomu Nakaoka

国際基督教大学卒。東洋経済新報社編集委員、米ハーバード大学客員研究員、東洋英和女学院大学教授などを歴任。専攻は米国政治思想、マクロ経済学。著書に『アメリカ保守革命』(中公新書)。

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