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論争を呼ぶ台湾の頼清徳総統が語る「戦後80年」、どの歴史観から見ても説明がつかない言動の背景には台湾を守るという意識か

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台湾の頼清徳総統
頼清徳総統は「国家を団結させる10講義」と称して講演活動を行っているが、その言動に批判の声も出ている(写真:Bloomberg)

台湾の頼清徳総統が示す中華民国/台湾史をめぐる「語り」が論争を読んでいる。台湾では国民党所属の立法委員(国会議員)へのリコール案が24件成立し、7月26日に24人の議員を解職(罷免)するかを問う投票が行われる。

このリコール案が決まった直後から、頼総統は「国家を団結させる10の講義(団結国家十講)」と称して、ロータリークラブなど民間団体での連続講演を始めた。総統府の説明によれば、講演の目的は、台湾社会の声に耳を傾け、団結を促し、朝野(与野党)をあげて外的脅威に立ち向かうことにある。

しかし、総統という立場でありながらリコール活動に正当性を与えることが講演の真の目的であり、その内容は台湾社会をさらに分断させるものだという批判も出ている。

中国の歴史観への戦いか?

頼氏はすでに、「国家」「団結」「憲政体制」「国防」をそれぞれテーマにした4回の講演を終えた。そこには昨年5月に総統就任してから示されてきた中華民国/台湾史をめぐる「語り」が、より明確に表れた。

特に最初の「国家」の回で、頼氏はサンフランシスコ平和条約では日本が台湾・澎湖諸島の主権を放棄したにすぎず、中華人民共和国政府は台湾を統治したことが一度もないと繰り返した。そのうえで、「中華民国」「中華民国台湾」「台湾」はすべて国家の名前であり、どの名称を使用しても独立自主の国家だ、という就任演説以来の主張を展開した。

近年の中国政府は、サンフランシスコ体制および同体制と補完的な関係にあったアメリカや日欧など旧西側諸国との「一つの中国」に関する部分的合意に触れず、それに代わってカイロ宣言、ポツダム宣言、および国連の中国代表権交代を決めた国連総会第2758号決議を強調する形で台湾への主権を主張している。

頼氏の「語り」は、このような中国の歴史観との戦いとして説明が可能である。具体的には、サンフランシスコ体制において中華人民共和国の台湾に対する主権が認められず、国連総会第2758号決議でもその問題には決着が付かなかったことが説明の中で重視される。

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