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100周年を迎えるのにいまいち盛り上がりに欠ける台湾の国立故宮博物院。素直に祝えない複雑な経緯から政治的にも利用される微妙な立場が続く

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創立100周年を迎える台湾にある故宮博物院だが、その歴史的背景から台湾では政治的に難しい立場に置かれている。

台北故宮博物院
台北にある国立故宮博物院。所蔵品の価値の高さから世界四大博物館のひとつともされる(写真:PIXTA)

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本記事は2025年3月22日7:00まで無料の会員登録で全文をお読みいただけます。それ以降は有料会員限定となります。

学校が春休みシーズンを迎え、これから台湾に旅行する読者もいらっしゃるだろう。または1カ月ほど先のゴールデンウィークに向けてガイドブックやウェブサイトを見ながら、今まさに計画を立てている方もおられるかもしれない。

2024年に台湾を訪問した外国人は786万人に上ったが、そのうち日本からの訪問者数は132万人(17%)だった。これは香港(15%)、韓国(13%)を押さえ世界トップの数字である。

なお、同期間の台湾から日本への訪問客数は604万人にまで達している。台湾の観光業界からすれば、もっと日本人に積極的に遊びに来てほしいところだ。

創立100周年を迎える国立故宮博物院

台湾には北から南まで魅力的な観光地が数多くあるが、よほどの台湾通でなければ、旅行先として最初に検討するのは交通の便の良い台北だろう。そして、いざ台北のどこに行こうかと調べ始めたとき、有力な選択肢に入ってくるのが国立故宮博物院(以下、故宮博物院)である。

故宮博物院は、台北郊外に位置する巨大な博物館である。台湾グルメを手軽に楽しめることで知られる士林夜市とセットで周る観光プランもよく見かける。台北の故宮博物院の2024年度1年間の参観者数は187万人で、うち31万人が日本からだった。これは外国籍者のなかで32万人の韓国に次ぐ数字である。

今年2025年は故宮博物院の創立100周年で、台湾南部の嘉義県にある分館(南部院区)の創設10周年にあたる節目の年である。同院は一連の記念事業計画を「故宮100+」と銘打ち、2025年度の来館者数を南院と合わせて350万人まで伸ばす目標を掲げている。

しかし、マスメディアの報道やSNSを眺めている限り、台湾を挙げてこの100周年を盛り上げる雰囲気は今のところ乏しい。その背景には、故宮博物院の台湾政治における極めて「微妙な」立ち位置の影響があると考えられる。

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