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中国が激怒する台湾総統の演説は本当に挑発的か 台湾に挑発のメリットなく国内の亀裂防止狙い

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中国は台湾の頼清徳総統を独立志向で挑発的だと批判するが、頼総統の演説を分析すると内政上の理由が強そうだ。

台湾の頼清徳総統
10月10日の中華民国国慶節に演説する頼清徳総統。演説時はかなり緊張気味でプロンプターに映し出された演説原稿を凝視しがちだった(写真:Bloomberg)

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※本記事は2024年10月26日6:00まで無料で全文をご覧いただけます。それ以降は有料会員限定となります。

10月は中国と台湾でそれぞれ国慶節、いわゆる建国記念日を迎える月だ。中国は10月1日で、今年は毛沢東が1949年に北京の天安門で中華人民共和国の建国を宣言してから75周年の節目だった。

一方、台湾では10月10日に国慶節の式典が行われる。10が2つ並ぶので「双十節」とも呼ばれる。この日は、1911年に湖北省武昌で清朝に対する武装蜂起が行われ、辛亥革命の起点とされる。革命が広がり1912年1月1日に中華民国が成立したが、中華民国は第2次世界大戦後に内戦に敗れて台湾に移転した。台湾で祝われるのは中華民国の建国である。

台湾では1990年代に民主化が進み、台湾の有権者が総統や立法委員(国会議員)を直接選挙する政治体制に移行した。それまでの台湾では、中国大陸で選ばれた後に政府の移転とともに台湾に来た国会議員らが終身議員として残っていた。民主化後の台湾は中国大陸の民意とは切り離された政治体制に移行したのである。

中国は頼清徳総統を独立志向で挑発的と批判

ただし、この民主化改革は中華民国憲法に条文を追加する形で進められた。そのため、今の台湾が名乗る正式な国号は中華民国のままで、2024年10月10日は113周年だった。この国慶節の式典で、台湾の頼清徳総統は「団結台湾、一緒に夢を実現しましょう」と題する演説をおこなった。

それから4日後、中国は台湾を取り囲んで大規模な軍事演習を行った。双十節後のタイミングを狙ったものとみられる。「聯合利剣2024B」と名づけられたこの演習の目的について、中華人民共和国国防部は「『台湾独立』の分裂志向勢力による『独立』を謀るふるまいに対する強い脅しであり、国家の主権を守り、国家統一を維持するための正当で必要な行動である 」と発表した。

台湾との関係を所管する中国国務院台湾事務弁公室の陳斌華スポークスマンは、説明を補足して次のように述べる。

頼清徳は就任以来、『台湾独立』の分裂志向の立場をかたくなに守り、『台湾独立』の主張を大いに広め、中国は一つであるという原則に対する深刻な挑発をおこなっている。外部勢力と結託して『独立』の挑発を絶えず続けることは、両岸(中台)関係を深刻に破壊し、台湾海峡の平和と安定を深刻に脅かしている。『台湾独立』と台湾海峡の平和は水と油のように相容れない。もし頼清徳当局が過ちを自覚することなく、『独立』を謀る挑発を続ければ、台湾の民衆を災難の深淵に押しやることになるだろう。

BBCは台湾の王信賢・国立政治大学教授の見解を紹介。中国の演習は頼清徳総統による直近の双十節の演説にのみ向けられたものではなく、今年5月の総統就任演説に始まる一連の言論に対する反応だと指摘した。

それでは5月の就任演説以来の頼清徳総統の言論にはどのような特徴があったのか。中国共産党政権が「台湾独立」の挑発を見出し得る要素はどこにあったのだろうか。5月から10月までの主要な演説をみてみよう。

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