少林寺を一大ブランドに育て上げた名物住職が拘束された背景にも統制強化の流れがある。

「少林武術」で知られる中国河南省の少林寺で7月末、住職の釈永信氏が拘束され、調査を受けていることが明らかになった。寺の資産横領が主な容疑だ。ただ、同氏は強大な資金力を武器に影響力を拡大している。それが、「宗教の中国化」を掲げ、社会主義への従属を求める政権の警戒心を高めたとの見方が強い。
中国の僧侶として初のMBA取得
少林寺はインドから中国に「禅」が伝わったとされる故地。伝統武術「少林拳」の発祥地としても知られる。釈氏は1999年、住職に就任。全国人民代表大会代表(国会議員に相当)や中国仏教協会副会長も務める。中国の僧侶として初めてMBA(経営学修士)を取得し、寺名の商標登録を積極的に行うなど「少林寺ブランド」の確立に注力した。その経営手腕から「CEO住職」の異名を持つ。
拘束後、同寺は釈氏が「仏教の戒律に著しく違反し、長期にわたって複数の女性と不適切な関係を保ち、私生児をもうけた」と発表。中国仏教協会も釈氏の「戒牒(僧侶としての資格証明)」を即座に抹消した。住職の後任には同じ河南省洛陽市の名刹、白馬寺の住職が任命された。釈氏拘束の第一報が7月25日、寺の正式発表が28日、新住職の任命が29日というスピーディーさで、当局による事前の周到な準備をうかがわせる。
釈氏とはどのような人物なのか。
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