
強気に出るEUに対して、日本の対米関税交渉は慎重なものとなっている。その裏側にはどのような事情があるのか(写真:ブルームバーグ)
交渉において「大きいこと」は交渉力を増大させる。EU(欧州連合)が対米関税交渉で強気なのは、このためだ。しかし、個別企業がアメリカ国内の生産を増加させれば、国の交渉力は弱くなる。こうした矛盾が鉄鋼関税で現実化している――。野口悠紀雄氏による連載第148回。
アメリカとの関税交渉でEUは強気
2025年6月初頭の段階で、EUとアメリカの関税交渉は緊張状態にある。ドナルド・トランプ大統領は「EUとの交渉が停滞している」として、EUからの全輸入品に対して50%の関税を課すと警告した。
当初、これらの関税は6月1日に発効する予定だったが、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長との電話会談を受けて、7月9日まで延期された。交渉期限までに合意に至らない場合、アメリカは50%の関税を発動する可能性があるが、それに対してEUは約950億ユーロ相当の報復関税を準備している。
関税交渉で、EUはなぜ強気の立場を取り続けるのか。それは、EUの対米輸出額が大きいからである。
2023年におけるアメリカの主要な貿易相手国からの輸入額(財貨ベース)は次のとおりだ。
中国:4269億ドル
カナダ:4186億ドル
メキシコ:4752億ドル
EU(27カ国):5533億ドル
日本:1481億ドル
カナダ:4186億ドル
メキシコ:4752億ドル
EU(27カ国):5533億ドル
日本:1481億ドル
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