〈赤澤亮正経産相に直撃①〉対米80兆円投資の勝ち筋とは? 「胴元のアメリカから負ける席に座らされてきたが、特別なパートナーに飛躍できた」
――改めて昨年のアメリカとの関税交渉をどう振り返りますか。
トランプ大統領の戦略は、世界約200ヶ国に対し「関税を下げてほしければ、そちらも関税を下げなさい」と迫るものだ。多くの国が関税引き下げに応じる中、日本は農産物を含め一切の関税を引き下げなかった。これは良かった点だ。石破(茂)総理(当時)からの「関税より投資を」という明確な指示もあった。
当初は「赤澤には荷が重い」「自動車関税が下がるはずがない」とも言われたが、結果はどうだったか。日本側は農業関連を含め一切の関税を下げず、米国側からの相互関税と自動車関税を15%引き下げることに成功した。これほど有利な条件を勝ち取った国は他にないはずだ。
自動車関税について付け加えると、韓国はゼロの状態から今回15%を課された。日本も15%だが、もともと2.5%がかかっていた。アメリカへの自動車輸出において金額では日本のほうが上だが、台数では韓国のほうが多い。そうしたライバル関係にある韓国との間にあった2.5%分の差が解消されたことで、日本の自動車メーカーは価格競争力を得ることができたのではないかと思う。
コロナ、リーマン級の衝撃を回避
――アメリカは他国との交渉も並行して進めていました。
私が交渉中、ベンチマークにしていたのはEUだ。EUは27カ国で「20兆ドル経済」、対して日本は「4兆ドル経済」。ドイツ1国にも及ばない規模だ。普通に考えればアメリカは、EUに対しては日本以上に有利な条件を提示するおそれがあった。しかし結果的に、ラトニック商務長官らとの信頼関係をベースにEUと同じ「最恵国待遇」になった。27カ国のEUに対し、1国で同じ条件を勝ち得たのは大きい。
日本は、関税を上乗せしない「ノースタッキング(上限15%)」という特例も得られた。これにより本来5兆円超に上るはずだった関税負担を、2兆円超まで減らすことができた。これは日本経済にとって大きい。日本の全企業の経常利益合計は約110兆円だが、もし5兆円がそのまま奪われていれば、経常利益の4%以上が吹き飛ぶ計算だった。この規模は、コロナ禍やリーマンショック時に匹敵する衝撃だ。それを「通常の景気変動の範囲内」に抑え込むことができたからこそ、経済界に「賃上げの流れを止めないで」と言い続けられている。


















