アメリカは、EUから多様で高付加価値の製品(医薬品、機械、化学製品、自動車など)を大量に輸入している。EUからの輸入額は増加傾向にあり、とくにドイツやアイルランドなどからの医薬品、機械、電子部品といった製品群が顕著だ。
EUからの供給を断つことは、アメリカ国内の消費・産業活動に大きな影響を与える。例えば、EUからの自動車輸入に高関税をかければ、アメリカ国内の販売価格が上昇し、消費者の不満やインフレ圧力につながる。
また、EUはアメリカの主要な輸出先でもあるため、EUが報復関税を課せば、アメリカ製品(航空機、農産品など)に大きな打撃を与えることができる。だから、トランプ政権もEUに対する高率の関税導入には慎重にならざるをえない。
関税を使って“脅す”ことは、アメリカ自身のリスクが大きいのだ。トランプ政権が「50%関税」導入をちらつかせても、実際には交渉の手段としての効果は限定的になる可能性が高い。
EU側は「強硬に出てもアメリカは本気では関税をかけられない」と認識し、交渉を有利に進めやすい立場にある。EUは一体となって交渉することで、アメリカに対して「交渉コストの高い相手」として振る舞うことに成功しているのだ。
規模が小さい日本は強い立場を表明しにくい
日本からの輸入は、主に自動車、電子部品、機械類が中心であり、EUと似た構造だ。しかし、額はEUに比べて4分の1程度でしかない。
このように規模が小さいため、日本はEUのような強い立場を表明しにくい。日本政府は自由貿易体制の重要性を強調しつつ、関税の見直しや引き下げを要請している。
「大きいこと」が関税交渉上有利になるのであれば、日本も単独で交渉するのでなく、集団を形成して交渉すべきではないだろうか――。この観点から、日本が「単独交渉」にこだわるのではなく、経済連携圏(ブロック)として交渉する意義は極めて大きいといえる。
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