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田中均が語るトランプ関税交渉の突破口「日本は自由貿易の旗を掲げ、中国も含めて推進するべきだ」

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田中均元外務審議官が語る、トランプ関税交渉の突破口 (編集部撮影)

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トランプ政権による関税政策が世界を揺さぶっている。1980年代の日米貿易摩擦の時期に外交官として対米交渉に臨み、2000年代には外務省のアジア大洋州局長として小泉政権の日朝首脳会談を実現させた田中均氏は現状をどう見るか。話を聞いた(インタビューは4月24日に実施)。

――相互関税で世界が混乱しています。トランプ政権のやり方をどう見ますか。

通常の感覚で言えば「言葉を失う」。

関税政策というだけではなく、一種の統治革命だと思っている。トランプは、既存の体制、規範、多国間の取り決めに縛られない。短期的な利益を達成するために「取引」をする。

普通、国際関係での「取引」は非常に限定的な場合しか行わない。戦争を止める場合など、複雑なコンテクスト(状況)の中で、短期的、中期的、長期的な利益を考えてやる。しかし、トランプにはそうした基準はない。

考えられないことだが、トランプはシナリオを自分で書き、主役を演じ、広報戦略をやる。通常は、担当閣僚や省庁が、積み上げによって政策を追求するが、トランプは違う。

自らシナリオ書き主役を演じるトランプ

――関税交渉のトップバッターは日本です。どこに注目しますか。

私たちが1980年代にやった交渉では、アメリカ側は、「日本の貿易は不公正で市場は閉鎖されている」「アメリカの車は売れない」と言ってきた。その時に「ちょっと待てよ」と議論した。「ヨーロッパ車は企業努力で日本市場向けにパフォーマンスを変えて売り込んでいるじゃないか」「アメリカ企業は日本市場に売ろうという気持ちすら持っていない」と。米議会は日本に差別的関税をかけようとしているが、行政府は自由貿易を守るために行動してくださいと伝えた。

ただ今回は全然違う。議会が騒いで関税をかけろと言っているのではない。トランプに自由貿易を守る、という考えはない。

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