
――相互関税で世界が混乱しています。トランプ政権のやり方をどう見ますか。
通常の感覚で言えば「言葉を失う」。
関税政策というだけではなく、一種の統治革命だと思っている。トランプは、既存の体制、規範、多国間の取り決めに縛られない。短期的な利益を達成するために「取引」をする。
普通、国際関係での「取引」は非常に限定的な場合しか行わない。戦争を止める場合など、複雑なコンテクスト(状況)の中で、短期的、中期的、長期的な利益を考えてやる。しかし、トランプにはそうした基準はない。
考えられないことだが、トランプはシナリオを自分で書き、主役を演じ、広報戦略をやる。通常は、担当閣僚や省庁が、積み上げによって政策を追求するが、トランプは違う。
自らシナリオ書き主役を演じるトランプ
――関税交渉のトップバッターは日本です。どこに注目しますか。
私たちが1980年代にやった交渉では、アメリカ側は、「日本の貿易は不公正で市場は閉鎖されている」「アメリカの車は売れない」と言ってきた。その時に「ちょっと待てよ」と議論した。「ヨーロッパ車は企業努力で日本市場向けにパフォーマンスを変えて売り込んでいるじゃないか」「アメリカ企業は日本市場に売ろうという気持ちすら持っていない」と。米議会は日本に差別的関税をかけようとしているが、行政府は自由貿易を守るために行動してくださいと伝えた。
ただ今回は全然違う。議会が騒いで関税をかけろと言っているのではない。トランプに自由貿易を守る、という考えはない。