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田中均が語るトランプ関税交渉の突破口「日本は自由貿易の旗を掲げ、中国も含めて推進するべきだ」

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自動車や鉄鋼などの製造業がアメリカ国内でなくなっていったのは、労賃が安い場所に移るという経済発展のプロセスだ。より付加価値が高い産業に軸が移っていくのは自然で、アメリカの貿易収支は赤字かもしれないが、サービス収支は黒字だ。

それを元に戻すのはおかしい、というのが正論だと思うが、今は正論を吐けない。

田中 均(たなか・ひとし)/日本総合研究所国際戦略研究所特別顧問。 1947年生まれ。1969年、京都大学法学部卒業後、外務省に入省。 1979~83年に在アメリカ大使館、1985~1987年に北米局北米二課長、2000~2001年に経済局長として日米経済摩擦問題を担当。2001~2002年にはアジア大洋州局長として小泉政権下で日朝首脳会談を実現。2005年外務審議官で退官。2010~2022年に日本総合研究所国際戦略研理事長 (編集部撮影)

――話が通じない相手と妥結点を見いだせますか。

無理に妥協せず、日本の利益にかなう合意をつくればいい。例えばアラスカの天然ガスを買えばいい。日本のエネルギーの海外依存状況や、中東、ロシアの状況を見れば、アメリカから買ったほうが地政学的にはいい。難点はコスト高だが、「中東に依存しすぎだから多角化することは日本の利益だ」との論理は成り立つ。

日本で値段が上がっているコメは、カリフォルニアから入れたら安くなる。緊急的に期限を決めてやることはできる。

トランプが求めるのは見栄えだ。日本と取引し、アメリカの利益があったと宣伝したがっている。身を削って協力すべきではないが、日本の利益になるパッケージを作ることはやっていい。

いずれトランプの理不尽な行動は、どこかで挫折する。中国に高関税をかけてアメリカ経済が成り立つわけがない。アメリカ株は下がり、国債価格は落ち、金利は上がる。ドルの信任は落ちる。理不尽な政策を撤回させるには、アメリカの経済指標が変化するしかない。他の国がアメリカを叩いても、それで変えるようなトランプではない。

日本が自由貿易の旗を掲げるべきだ

――自国の経済難に直面すればトランプの考え方も変わると。

それしかない。

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