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アメリカがイランの核施設を攻撃、軍事衝突はどこまで拡大するのか? ホルムズ海峡封鎖の可能性は? 中東情勢の専門家が解説

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アメリカによる武力攻撃に抗議するイランの市民(6月22日、イラン・テヘラン、AP/アフロ)

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6月13日現地時間未明のイスラエルによる奇襲攻撃に端を発したイスラエルとイランの武力衝突がエスカレートしている。市民に多くの被害が生じる一方、6月22日にはアメリカがイランの核施設を攻撃し事態は一段と深刻化している。日本エネルギー経済研究所・中東研究センターの坂梨祥センター長に、今後考えられるシナリオ、日本の役割についてインタビューした(インタビューは6月23日に実施)。

──6月22日現地時間の未明に、アメリカ軍はイランの核関連施設3カ所を空爆により攻撃しました。

攻撃実施の可否判断について、アメリカのトランプ大統領は2週間以内という時期を設定していた。にもかかわらずあっという間に攻撃に踏み切ったことに驚いた。6月20日にイランと英仏独3カ国の間で協議が行われたが、まったく進展がなかったということで、イランにさらなる圧力を加えるには空爆が有効だと考えたのかもしれない。

──今後、イランはどのような対応をすると思われますか。

イランがアメリカに対して報復を行う可能性は十分にある。ただし、イランとしては戦争をこれ以上長引かせるのはマイナスだと考えているのではないか。そこで、イスラエルよりも強大なアメリカに対しては、報復したことが明らかである一方、被害を限定化するという象徴的なやり方が選ばれる可能性がある。

2020年1月にアメリカは、イランの革命防衛隊の対外工作部隊の最高指揮官を殺害した。このとき、イランは隣国のイラクにあるアメリカ軍基地を攻撃することで報復した。ただしこのときは攻撃の予告をしておき、アメリカ軍の兵士が退避した後にミサイルを撃ち込んだ。今回もこのように、アメリカ軍に被害がさほど生じない形での報復の可能性が高い。他方で、まったく報復を行わないという可能性は低いだろう。

ホルムズ海峡封鎖の可能性は

──イランが予告せずに報復し、アメリカ軍に被害が生じる可能性は。

可能性としてはありうるが、その場合、イランはアメリカとのさらなる軍事衝突に巻き込まれかねない。アメリカの軍事力が圧倒的に強大であることはイランも認識している。かといって何もしないというわけにはいかないということで限定的な、形を整えるための反撃をするという形が最も可能性としては高いだろう。

──ホルムズ海峡の封鎖の可能性は。イランの国会は封鎖の決議をしました。

ホルムズ海峡の航行はイランにとっても重要だ。中国への原油輸出を続けており、イランが輸入する物資も海峡を通ってイランの港に届けられている。封鎖はイランにとってマイナスであるはず。イランの国会が決議した背景には、イスラエルの攻撃をやめさせるために封鎖を持ち出し、世界にも多大な影響をもたらすという危機感を高めることで国際社会に対してイスラエルへの圧力を強めさせようという狙いがある。現時点での封鎖の可能性は低いと考えられる。

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