花王が高価格帯シャンプーに再び挑戦、かつての失敗生かし本気の改革、マス広告封印しSNSで若者訴求、王者「ボタニスト」と頂上決戦の勝算は?

「シャンプー・コンディショナーで史上初の総合大賞という非常に栄誉ある賞をいただきまして、本当に光栄に感じております。 メークアップやスキンケア、あまたあるコスメの中で、ヘアケア、そして我々のブランドが選ばれたことに非常に驚いています」
花王のヘアケア事業を率いるブランドマネージャーの野原聡氏は、6月11日に開催されたアットコスメ(@cosme)ベストコスメアワード授賞式で、喜びと驚きをにじませた。
過去に失敗した高価格帯、捲土重来を期す
2024年11月に発売した花王のヘアケアブランド「THE ANSWER(ジアンサー)」のシャンプー・コンディショナーが、大手口コミサイト「アットコスメ」の2025年の上半期新作ベストコスメ総合大賞に輝いたのだ。メイクアップやスキンケアなど、あらゆる化粧品を抑えてシャンプー・コンディショナーが総合大賞を受賞するのは、2008年にアワードが始まって以来、史上初の快挙。受賞効果は大きく、ECサイトでの販売数は2倍に跳ね上がったという。

THE ANSWERのシャンプーは税込み1760円(容量400ml)で販売されている。シャンプー本品税込み1540円以上とされている高価格帯シャンプー市場の中でも、強気な価格設定だ。野原氏は「既存の高価格帯製品より200円ほど高く設定したが、消費者に受け入れられている。販売店からの期待も大きい」と自信を見せる。
花王にとって、高価格帯シャンプーは24年春発売の「melt」に次ぐ第2弾の位置づけだが、実は過去にも展開していた。2018年にはドイツで創設されたブランドを買収し、「GUHL LABORATORY(グール ラボラトリー)」シリーズを発売。容量430mlで1980円(編集部調べ)という価格帯で販売し、ポップアップストアの展開やデジタルマーケティングを行ったが、2021年にひっそりと生産を終了している。
花王の担当者は「日本のハイプレミアム市場への挑戦として展開したが、本格参入の体制が不十分だったこともあり、継続的なブランド育成ができなかった」ことが背景にあると明かす。
一方、これまで高価格帯シャンプー市場を切り拓いてきたのは、新興企業のI-ne(アイエヌイー)だ。ドラッグストアにおけるプレミアムブランドの金額シェアでは、同社の「BOTANIST(ボタニスト)」が1位、「YOLU(ヨル)」が2位で上位を独占。とくに今年で発売10周年を迎えた「BOTANIST」は高価格帯シャンプーの代名詞的存在で、シャンプー王者・花王のシェアを高価格帯から切り崩してきた。
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