豊かな日本社会で「心を病む人」が増えている理由 「エゴの連鎖」を止めれば心穏やかに生きられる

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企業においても、上司が「お前はこうしろ!」と言えば、みんながその必要性を共有していますから、歯を食いしばって頑張っていたわけです。

それが一定の成果を得て、今では絶対に必要だと強く感じる目標を持ち続けることが難しくなり、それを共有する意識も希薄になっています。

安全が担保される世の中になり、快楽はコンビニなどで手軽に買えるようになり、上司から叱責されると、なぜそんなに頑張らなければいけないのか、別に自分でなくてもよいのではと思ってしまうようになってきたのです。

「多様性の時代」といわれますが、この考え方は、これからの時代を生き抜く私たちにとって、とても重要な指針を指し示してくれていると思います。しかし同時にこの言葉が、それぞれの都合のいいように利用される危険性も否めないかと思っています。

1人ひとりが自分の生き方を選び、自分のスタイルや能力を使って生きる道を探せる時代。

しかしその一方で、「多様性」という言葉を使うことで、相手の多様性、つまり価値観や考え方の違いを認めるのではなく、自分の価値観や考え方ばかりを主張し、理解してもらうことだけに比重が置かれてしまう側面があるのも確かです。

共通の必要性は見つけづらく、個々人が法やルールに保護された状態で、好き放題に自分の主張をする。時代の曲がり角に来ているともいえます。

「今、この瞬間」をどう生きるか?

世界が変化するスピードは、人が快適に生きていけるスピードを超えていると思います。インターネットを通じて世界規模で瞬時に情報が共有され、さらに文明を発達させることが可能な時代でもあります。

急激な変化についていけない企業は、コロナ禍においては、「コロナ前」を取り戻そうという感覚で動きはじめました。しかしそういった姿勢では、時代の波に取り残されるばかりです。「これまではこうだったから」という点にとらわれているからです。

これからやってくる劇速時代に適応していくには、「今この瞬間」を起点にして状況を受け止め、「さて、今をどうするか」を都度考える必要に迫られているのではないでしょうか。そしてこの考え方こそが、実は、瞑想の本質でもあります。

その瞬間ごとに、今という現実を、なんの先入観もなくただ感じていく。そしてその現実の中で、今、自分を含む全体にどう貢献できるかを感じとっていく。そこに共通の価値観、危機感、目的意識が生まれ、目まぐるしく移り変わる環境の中で、チームとしてやっていける時代が来るのではないでしょうか。

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