「星のや」が脱デジタル宿泊を進める社会的背景 30代の3割が「スマホ依存症」を自覚している
日本の社会全体で「デジタル依存」が進んでいるように見える。メディア環境研究所が実施した「メディア定点調査2019」によれば、「携帯電話/スマートフォン」の1日当たりの接触時間は、ほぼ毎年増え続け、今年は117.6分となり、はじめて100分を超えた昨年(103.1分)を上回った。
また、モバイルに特化した調査研究機関であるMMD研究所が2019年8月に実施した調査では、スマホに「かなり依存している」と回答した「スマホ依存症」の人の割合が、最も多い30代で29.8%、全世代平均でも21.2%に達した。
こうした背景から、デジタル依存・ネット依存治療の専門外来なども増えてきているようだが、今回注目したのは、旅の中で「脱デジタル」を図ろうというプランやツアーだ。星野リゾートが展開する旅館ブランド「星のや」で提供されている宿泊プラン「脱デジタル滞在」を中心に取材した。
ゲームにログインしたい衝動が抑えられない
実は筆者も、かつてデジタル依存症(ゲーム依存症)に陥った時期がある。2013年に前職の企業を退職後、平日の昼間は株価のチャートをパソコン画面でチェックし、夕方から深夜まで、オンラインゲームにログインしていた。休日は、ほぼ1日中、ゲームに熱中し、対人戦(PvP)で少しでも強くなろうと、1つのキャラクターに少なくとも100万円以上はつぎ込んで「強化」した。
幸い筆者はそこまでには至らなかったが、中にはゲームに熱中するあまり、食事はおろかトイレに行く時間も惜しみ、手元に用意したペットボトルで用を足す「ボトラー」と呼ばれる人までいるらしい。
あるときクレジットカードの明細表を見て月々の支出額の大きさに驚き、また、極端にリアルで人と接する機会が減ったことに、不安というか、うすら寒さを感じた。
すぐにゲームがやめられればいいのだが、これまでの投資額の大きさや作成したキャラクターへの愛着、そして、リアルの人間関係よりもはるかに長い時間をともに過ごしているゲーム内の仲間とのつながりが切れることへの恐れから、なかなかゲームをやめる踏ん切りがつけられずにいた。
このままでは将来が真っ暗になるのが目に見えている。けれども、家にいれば、どうしてもゲームにログインしたい衝動が抑えられない。そこで、パソコンもスマホも持たずに数週間、海外へ「強制シャットダウン」の旅に出かけ、ゲーム依存症から脱却することができた。
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