「星のや」が脱デジタル宿泊を進める社会的背景 30代の3割が「スマホ依存症」を自覚している

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星野リゾートの星野佳路代表は、2019年4月のプレス発表会で、今後、どのようなマーケットを重視していくのかという筆者の質問に対し、「私たちは現在、3つのマーケットに注目している。1つは20代を中心とする若い方々の旅行参加率をどのように高めていくことができるかだ。これは日本の観光産業の将来にとって非常に重要なテーマとなる。

2つ目は70歳以上の方々だ。これまで日本の旅行消費市場を支えてくださってきた団塊の世代の方々のほぼ全員が2025年には後期高齢者となる中で、引き続き温泉地を旅していただけるように対策を打たなければならない。

そして、3つ目が一人旅だ。現在、一人旅の需要が増えているにもかかわらず、1人で旅行する人が宿を探しにくい状態がある。私たちとしては一人旅のお客様に対して、ウェルカムであるという姿勢を示すことが必要だ。この3つのマーケットに関しては、当面、個々のセグメントごとの利益率よりも、旅に出やすい環境を星野リゾートが提供しているのだということを知っていただくことをより重視していく」と回答した。

脱デジタル滞在は、星野代表が挙げた3つのマーケットのうち、若い世代と一人旅という2つのマーケットと親和性がある。

「脱デジタル滞在」を、星のや以外のブランドへ展開することについては、「今のところ検討していない」(星野リゾート広報)とのことだが、若い世代でも使いやすい「OMO」や「BEB」、また、今年から「界のひとり旅」というプランを売り出し、一人旅需要を積極的に掘り起こそうとしている「界」ブランドでも展開すれば、それなりの需要を見込めるのではないか。

デジタルデトックスツアーとは?

ところで、脱デジタルは、忙しいビジネスパーソンにこそ必要だとも思われるが、脱デジタルのために観光地に出かけて1泊するのは難しいという人も多いだろう。もっと手軽に脱デジタルを体験したいという人に勧めたいのが、鎌倉で行われている日帰りで体験できる「デジタルデトックスツアー」だ。同ツアーは、地元のカフェオーナーの宇治香さんが、2012年から不定期で、年に数回、開催している。

鎌倉でデジタルデトックスツアー(税込み2900円)を開催する宇治香さん(筆者撮影)

ツアーの内容を簡単に説明すると、以下のとおりだ。待ち合わせ場所に集合後、ツアー参加者は宇治さんにデジタル機器を預け、午前中は宇治さんの案内で寺院の境内での瞑想や、市街地のすぐ近くにもかかわらず、豊かな自然が残る鎌倉の山でのハイキングを楽しむ。「スマホに頼らないことが、いかに五感を開放することにつながるかを体験して欲しい」(宇治さん)という。

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