「星のや」が脱デジタル宿泊を進める社会的背景 30代の3割が「スマホ依存症」を自覚している
そして、昼食休憩時には、午後のワークショップが行われる施設の名前のみが告げられ、具体的な場所の情報が示されないのが、このツアーのポイントの1つとなる。普段はスマホで探せる場所を、地元の人とコミュニケーションして、自力で探さなければならないのだ。
「スマホを使うことで人とのつながりを保てているように思うが、実は無意識のうちに壁をつくっている。ある場所を探すときに、スマホを持ってなければ人とコミュニケーションを取らなければ調べようがない。スマホを使うことは、旅先で人と知り合う可能性を自ら摘んでいることにほかならない」(宇治さん)
そして、午後のワークショップでは、参加者全員で、旅の思い出を1枚の大きな布に描き込んでいき、作品として仕上げる。
ツアーに込められた「思い」
宇治さんは、このツアーを始めた背景やツアーに込めた思いについて、以下のように話す。
「今の世の中は、人に対して丁寧ではなくなっているということを至る所で感じる。家の電話を使っていた時代は、今頃はご飯食べてる時間かな? 風呂に入ってる時間かな?といった、相手に対する気遣いがあった。
ところが今は、とりあえずメールを打っておけばいいか、というようなコミュニケーションの雑さがある。こうした配慮が欠けてきたことによって、人間関係がギクシャクしている。つまり、想像力が働かなくなっているのだ。
また、現代社会では、人と人が助け合ったり譲り合ったり、他人のために手間や時間を費やしたりすることが少なくなった。この手間暇をかけないことが“便利”という言葉に置き換えられ、殺伐とした人間関係を生み出している。
もちろん、デジタルがすべて悪いわけではない。忘れ去られてしまっているアナログというものを生活の中にちゃんと取り入れて、デジタル・アナログの両方をバランスよく使っていくのが、心身にもいいし、人間関係にもいいのではないかということを、ツアーを通じて伝えたい」(宇治さん)
今回紹介した脱デジタル滞在やデジタルデトックスツアーは、あくまでもデジタル機器との付き合い方を見直すきっかけにすぎない。旅先から日常に戻って何も意識しなければ、結局、デジタル依存状態に逆戻りしてしまう。宇治さんは、「デジタル機器を使わないからこそできるという楽しさや有意義だと思うことがなければ、デジタルデトックスは続かない。ツアーで体験する内容を参考に、そういったものをぜひ発見してほしい」と話す。
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