有料会員登録 東洋経済オンラインとは
政治・経済・投資 #ホットイシュー

「LNGタンカーで造船復活」は幻想だ、日本が韓国に勝てない3つの決定的理由、日本が狙う「高付加価値戦略」の落とし穴

9分で読める 会員登録で読める
2026年4月、神奈川県・川崎港に入港するLNGタンカー(写真:AFP=時事)

INDEX

日本政府は造船業の強化政策を推進している。その一環として、高付加価値船であるLNGタンカー、つまり液化天然ガス輸送船の建造を検討し、その機運が高まっている。

建造再開が造船業復活の足掛かりとなるとの期待もある。日本造船業は今でも世界第3位の地位を占めるものの、1位の韓国と2位の中国には大差をつけられている。そこで高付加価値船であるLNGタンカーで再興を図るとの発想である。

だが、果たしてLNGタンカーで日本の造船業は復活するのだろうか。

残念だが、それは望めない。韓国との競争に勝つ見込みがないからだ。できるのは自国向けLNGタンカーを補助金付きで国産船に置き換える程度である。そしてこれは1950年代の輸入代替政策への先祖返りである。世界市場への参入は期待できない。

日本の独自設計が難しい

なぜ、日本はLNGタンカー建造で韓国造船業に勝てないのか。第1の理由は、LNGタンクの設計や施工で韓国に勝てないことだ。

LNGタンカーの肝は断熱タンクである。価値や評価はその製造にかかっている。具体的には極低温を維持できるか、大容積を実現できるか。そのうえで安価につくれるか、だ。

断熱性能は経済性そのものといってよい。外側からの熱侵入で天然ガスはどうしても蒸発する。この「ボイルオフ現象」と言われるものをどこまで抑制できるかが課題だ。ちなみに、今日の標準的損失量は1日当たりで搭載ガスの0.07%未満である。

容積効率も重要となる。船体容積当たりの搭載容量を増やせば増やすほど経済性は上がる。そのため、最近では船体構造をタンクに転用している。構造材にあわせて断熱材を張り、液面側の内張りとして「膜」と呼ぶステンレスの薄板を張る「メンブレン方式」だ。

そのうえで製造単価も安くおさえなければならない。高性能のタンクを作れても高価格では船価に響く。ボイルオフ損失よりも減価償却が高くついては意味はない。

現在の日本に、果たしてこの条件を満たすLNGタンクを造れるのだろうか。報道などで漠然と前提とされている国産設計は、ほぼ不可能である。今の日本でも設計や製造はできないことはない。ただ、韓国船のタンクに経済性で勝てる見込みはない。ボイルオフで負け、空間効率で負け、そのうえで製造単価でも負ける。0.07%を達成できず、さらに価格は高く付く事態もありえる。

2/5 PAGES

こちらの記事もおすすめ

あなたにおすすめ

政治・経済・投資

人気記事 HOT

※過去1ヶ月以内に配信した記事の閲覧数