「ない袖は振れない」は本当か 貧しい人々から富裕層へ富を移転する「緊縮効果」という名の罠 「財政再建」の裏にある「不都合な真実」
その結果、ギリシャは年金減額、消費税増税、サービスや産業の民営化、公務員給与カットにも着手しなければならなかった。2年後には、国内の主要10港を民営化し、島嶼の多くも売却に踏み切った。
これらの例は、財源不足に直面した政府が引き締めに踏み切るとき、まず国民サービスを狙い撃ちにするという、20世紀、そして21世紀の共通のパターンを示している。
このような例は星の数ほどもあり、世界のあらゆる国に及んでおり、社会ではいともたやすく予見可能な同種の破壊がもたらされる。
「緊縮効果」という名の国民的苦役
これをここでは「緊縮効果」と呼ぶことにしよう。これは、国家や州が、支払い能力や民間産業の名目で公的給付を削減する際に生じる、お決まりの国民的苦役のことだ。
緊縮策は、その名前で呼ばれることなくとも、予算削減(特に公教育、医療、住宅、失業手当などの福祉支出)、逆進課税、デフレ、民営化、賃金引き締め、雇用規制緩和といった現代政治の常套策として語られることが多い。
これらの政策は、富裕層と産業部門の優位を盤石なものにし、いずれも国家をより良い時代へと先導する特効薬として称揚される傾向を持っている。
アメリカでは、このような政策が政府によって繰り返されてきた。労働組合への攻撃は団体交渉権を衰退させ、最低賃金は貧困レベルにまで低迷した。また、雇用主は、特定の労働者が高賃金を求めて転職するのを禁じる「競業避止条項」を強制できるようになった。
生活保護は、低賃金層の就業を条件とする「ワークフェア」(労働と福祉の合成語)へと変貌した。つまり、低賃金労働を条件とする政府扶助へと姿を変えたのだ。
さらに、アメリカの逆進税制は、公的支出の不公平な分担を強いている。社会全体で分かち合われるべき消費税からの税収割合を増やし、高所得者層全体では法外な減税に踏み切っている。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら