【データ検証】「外国人による治安悪化」は本当か?→インバウンドは明確に無関係…だが、労働者の属性次第では犯罪増加も

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インバウンドと来日外国人摘発者数の間には、大きな相関は見られないという(撮影:梅谷秀司)
この記事のポイント
(1)インバウンドは犯罪率の向上につながっていない
(2)外国人労働者の犯罪率が日本人より高い最大の原因は属性
(3)世界的に、若い男性の犯罪率が最も高い
(4)日本の外国人労働者のなかでは、若い男性労働者が最も多い
(5)日本人の犯罪率が下がっている原因の1つは高齢化である
(6)生産性向上を徹底的に進めて、外国人労働者への依存をできるだけ抑えるべき
(7)企業の数を守るために外国人労働者を増やすのなら、犯罪の増加を容認するしかない
(8)国籍に関係なく、警察がきちんと対応するべき

先の参議院選挙の際には、外国人の増加を問題視する動きが顕著に見られました。特にインターネット上では、治安の悪化を懸念する投稿が多く、しばしば議論が紛糾しました。

その根拠として、令和6年版の『犯罪白書』が挙げられます。この白書によると、令和5年における外国人による刑法犯の検挙件数は1万5541件と、前年比で2594件(20.0%)増加しました。このデータを基に、治安悪化を危惧する投稿が増加したのです。

まず、議論の前提となるデータについて触れておきます。外国人の犯罪を論じる際に一般的に用いられるのは「刑法犯の検挙人員」の統計ですが、これはあくまで検挙された人に限られるため、犯罪全体の動向を正確に判断するには不十分です。ただし、大まかな傾向を把握する上では参考になると考えられます。

データを詳しく見ると、検挙「件数」は確かに20.0%増加していますが、検挙「人員」は8702人から9726人へと11.8%の増加に留まっています。

過去の推移を見ると、外国人による刑法犯の検挙件数は平成17年(2005年)にピークを迎え、4万3622件(検挙人員1万4786人)に達しました。令和5年(2023年)の数値は、このピーク時と比較して、検挙件数で64.4%、検挙人員で34.2%も減少しています。

直近のデータだけ見れば増加していますが、過去のトレンドも見ると、逆に検挙人員数は大幅に減っています。

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