この典型が、トランプが新設した政府効率化省(DOGE)のトップを一時務めて、トランプ政権内で強い権限を振るったマスクだ。
これまでアメリカでは、政治と私企業との間に法的なチェック体制を敷き、明確な線を引いてきた。こうしたアメリカ政治の法体系は今や大きく崩れようとしている。トランプ政権はアメリカ社会の特徴であった自由な報道に対する圧力も強めている。
つまりトランプ政権は、ウクライナ問題という国際関係だけでなく、国内での政権運営でも、従来の法治主義に基づく伝統を崩しつつあるのだ。こうした今のトランプ政治の流れを見ると、程度はもちろん異なるものの、プーチン政権の独裁体制と、政権運営の方向性が近似していることがわかる。アメリカとロシアの基本的なイデオロギーが共鳴し始めているとも言える。
ロシア極右のシンポジウムにマスクの父親が登壇
これを象徴する出来事が2025年6月にモスクワであった。プーチンに近い極右民族主義者のオリガルヒで、侵攻を熱狂的に支持するコンスタンチン・マロフェーエフが主催した国際シンポジウムである。
ラブロフ外相に加え、西側からはマスクの父親である南アフリカの実業家、エロール・マスクと、トランプを支援するMAGA(アメリカを再び偉大に)派の人気ラジオ番組ホスト、アレックス・ジョーンズがゲスト講演者として招かれた。
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