松田 ゼレンスキーはトランプとの会談後、ワシントンから欧州首脳らに電話して今後の対応を相談した。欧州首脳からは、ブダペストで会談を行うことはプーチンを利するだけだとの意見がトランプに寄せられただろう。
結論的には、欧州では自分たちがしっかりしないといけないという話になった。凍結中のロシア資産のうち、約2000億ドルの元本を戦費に組み込むとの決定も近く決まる見通しだ。ウクライナは当面、戦争資金に困らないだろう。今後トランプの強引な仲介がうまくいかなければ、戦争が続くと思う。
ドイツ連邦情報局の新長官マルティン・イェーガーは前駐ウクライナ大使で、わたしもキーウで親しくしていたが、彼は最近、ロシアによるNATOへの攻撃が2029年より前に起こる可能性があると警告した。
欧州は近い将来、ロシアの侵略に直面する可能性があると判断しており、防衛準備に本気だ。ここがトランプ政権と大きく異なる点だ。欧州は仮に停戦が実現しても、ロシアに対するガードを下げるつもりはない。次の侵攻までの戦間期に過ぎないと警戒している。
ウクライナは欧州と協力して、ロシアの継戦能力を奪うための石油・燃料関係施設へ自前のドローンやミサイルによる攻撃を拡大するだろう。
求められる高市政権の外交姿勢
吉田 発足したばかりの高市政権にとって、ウクライナ情勢を巡る課題は何か。ご意見をお聞きしたい。
松田 改めて、ウクライナ支援および対ロ制裁の再強化が重要だ。
難問は、ロシア産液化天然ガス(LNG)輸入継続問題だ。ベセント米財務長官が最近、先進7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議のためにワシントンを訪れた加藤勝信・前財務相と会談し、侵攻の戦費調達を支えるロシア産エネルギーの輸入停止を日本に期待していると伝えたからだ。
日本は極東サハリンでの開発事業「サハリン2」からLNGを調達しており、要望にどう対応するかが問われている。ベセント長官はその後、ウクライナとの戦闘終結に向けたロシアの取り組みが不十分だとして、ロシアの石油大手ロスネフチとルクオイルに制裁を科すと発表し、日本を含むG7に協力を求めると表明した。それだけに高市政権もロシアへのエネルギー依存率を下げる方向で動き出す必要に迫られている。
吉田 9月に北京の天安門広場で実施された軍事パレードで中国、ロシア、北朝鮮の首脳が天安門に並んで登場した。アメリカや日本など西側と渡り合う構えを見せた事態に対し、日本政府の対応は弱かったと思う。
松田 そう思う。夏の参院選以降に生じた3カ月の外交空白期間の影響は大きかった。従来ならロ朝関係が上手くいくと、中朝関係はぎくしゃくするのが常だ。しかし、今は中朝が軍事面でも関係を強化し、3カ国の足並みが揃ってしまった。これはまったく新しい状況だ。
日本ではかつては中国への牽制目的で日ロ関係を改善するという外交があったが、中ロ朝協力の安全保障上の意味をしっかり踏まえて、欧米との安保対話と協力を強化することを期待する。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら


















無料会員登録はこちら
ログインはこちら