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〈騒動の内幕〉地域新聞社は「ウルフパック」に襲われたのか?/「気づかなければ経営権を奪われていた」薄氷の株主総会

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地域新聞社
地域新聞社は千葉県や茨城県でフリーペーパーを発行する。社長の細谷佳津年氏は中古マンション販売ADワークスグループの元専務。ADワークスの子会社「エンジェル・トーチ」が地域新聞社に出資し筆頭株主になった流れで、2024年に社長に就いた(記者撮影)

「事前に気づかなかったら、会社は本当に乗っ取られていた」

市場関係者がそう語るのは、地域新聞社(千葉県八千代市)を突如襲った騒動のことである。1984年設立の同社は、千葉県や茨城県でフリーペーパーの「ちいき新聞」を発行する。

東証グロース市場に上場する企業とはいえ、2025年8月期の売上高は31億円、総資産は22億円でパートを含む社員は約230人(ともに8月末)。地域密着型の小規模な会社だ。

地域新聞社はいわゆる「ウルフパック戦術」を仕掛けられたと主張する。発行済み株式数の20%以上を共同で保有された疑惑があり、一気に経営権を奪われる懸念に直面した。

ウルフパック戦術は、経営支配権を握る意図を明らかにせず、複数の投資家が協調して、それぞれの株式保有割合を5%未満にとどめながら買い増していく点に特徴がある。ウルフパックはオオカミの群れを意味する。

現経営陣が「薄氷の勝利」で防衛

上場企業の発行済み株式数の5%超を保有した際は、大量保有報告書を5日以内に財務局へ提出する義務がある。裏を返すと5%未満の保有であれば、それを回避できる。

ウルフパック戦術は、この「5%ルール」を巧みに使って買収を仕掛ける「奇襲戦法」だ。日本で顕在化し始めたのはこの数年とされる。標的となった企業からすると極めて対処が難しい。

11月30日に開かれた地域新聞社の定時株主総会では、ある株主が細谷佳津年(かつとし)社長を含む現取締役3名の交代を求める修正動議を出した。可決されれば、取締役5名のうち3名を押さえられ、取締役会の支配権を失ってしまう。

結果は原案である会社提案の取締役選任案が可決されたことで、修正動議は否決扱いとなった。ただ、現経営陣の命運を分けた可決率は、細谷社長が55.29%、他の取締役も50%台と、まさに「薄氷」を踏むものだった。

前出の市場関係者は、「たまたま気づいて委任状を集めて対抗したもようで、ギリギリの勝利だった」と緊迫の状況を語る。地域新聞社の関係者も「ひとまずは総会を乗り越えられた」と胸をなでおろす。

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