真の狙いがわからない大株主が突然浮上するなど、仁義なき買収合戦が繰り広げられている。
2022年7月22日、東京・八丁堀の東洋証券本店に1通の書面が届いた。「個別株主通知明細」──。アクティビストなどが「自らが株主である」と宣言するための書類で、いわば宣戦布告だ。
この日を機に、現在まで続く仁義なき戦いの火ぶたが切って落とされた。
最初に東洋証券に宣戦布告をたたきつけたのは、UGSアセットマネジメントという非上場の企業だった。経営陣との面談、取締役会議事録の閲覧許可申し立てなど、矢継ぎ早に要求を繰り出した。
22年9月にはBe Braveという別の非上場企業も浮上。東洋証券は同社からも経営陣との面談や株主名簿の閲覧を求められた。
こうした動きと前後して始まったのが、東洋証券株の急激な値上がりだ。当時、東洋証券は2期連続で営業赤字になるなど、業績不振にあえいでいた。
だが、そんな業績とは裏腹に、22年4月以降、株価は連日上昇していた。22年3月末に150円だった株価は、約1年で118%上昇し、23年4月末には327円になった。同業他社の間で「誰が東洋証券なんて買っているんだ」としきりに噂されるほど異常な株価上昇だった。
急浮上した大株主の正体
株価の上昇を招いたのは、UGS社やBe社などによる株式取得だ。東洋証券はこの頃まで主に自社で対応していたが、23年3月にUGS社など新たに登場した株主の合計保有比率が3割に近づき、窮地に追い込まれた。そこで助けを求めたのが、大手法律事務所の西村あさひ法律事務所だった。
西村あさひの徹底した調査により、背後にある人間関係が徐々に浮かび上がってきた。
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