トランプによるウクライナ戦争の停戦交渉はなぜ失敗するのか、古典が示す世界で戦争が絶えない根本的な理由
ヨーロッパはウクライナ支持を継続しているが、このまま戦争に巻き込まれることは避けている。アメリカは、ロシアからもウクライナからも手を引き、経済制裁という戦争だけを継続することになる。
結局停戦は成功せず、第3次世界大戦への火種を抱えながらウクライナ戦争は継続するのか。
なぜ平和が実現しないのか
なぜ平和が実現しないのかという問題について、2つの書物を紹介したい。1つは、E.H.カー(1892~1982年)の『危機の二十年』(1939年、邦訳は原彬久訳、岩波文庫、2011年)、もう1つはハンス・J.モーゲンソー(1904~1980年)の『国際政治』(1948年、邦訳は原彬久監訳、岩波文庫、上中下、2013年)である。

E.H.カーは著名なイギリスの歴史学者で専門はソ連史だが、日本では『歴史とは何か』の作者として有名だ。彼が第2次世界大戦直前に書いた『危機の二十年』は、今こそ再読されるべき書物である。
E.H.カーは、戦争が終わらない理由について、世界には世界の人々を納得させる正統な権力が存在しないからだという。世界共和国など存在しないし、存在することはないのだという。それは国民国家を生み出したような、国民の道義心がそこには欠けているからだという。
世界では、直接個々人が世界市民をなしているわけではない。個々人は国家という枠の国民という構成員である。その国家は、それぞれ自らの特殊な利害をもっている。それが世界ではもろに衝突するのである。だからこそ、国民もおたがいに敵対意識をもち衝突する可能性が大きい。そうなると世界国家など成立するはずもない。
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