勘違いから生じた第3次世界大戦が近づいている 今こそNATO、ロシアなど関連国の歩み寄りが必要だ

✎ 1〜 ✎ 176 ✎ 177 ✎ 178 ✎ 179
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
2024年8月24日、ドイツでウクライナ支持者の集会で「ATACMSが必要だ!」と訴える支持者(写真・Thomas Banneyer/picture alliance via Getty Images)

シェークスピアの小説には、しばしば奇妙な人物が登場する。有名なのがサー・ジョン・フォルスタッフだ。シェークスピアの「ヘンリアド」と呼ばれる4部作に出てくる人物のことだ。

この人物は、表と裏をあわせもち、味方なのか敵なのかわからない。正義を装い、賄賂を要求する。いわば破廉恥漢である。しかし、憎めない性格で、世知辛い世界をしっかりと生き抜く力をもっている。戯曲や小説には、話を盛り上げるためにも、この手の憎めない「輩」が必要だ。

しかし、このような手合いが現実に政治を司るとどうなるであろうか。ちぐはぐを通り越して、てんやわんやになるかもしれない。

戦争の世紀だった19世紀のヨーロッパ

19世紀後半のヨーロッパは戦乱に明け暮れた。クリミア戦争(1853〜1856年)、イタリア独立戦争(1859年)、普仏戦争(1870〜1871年)など、年がら年中戦争をしていたといえる。もちろん、これが産業を潤し、株価をつり上げ、景気を支えたことも間違いない。

とくに、戦争を使って自国の利益を図るということもしばしば行われた。戦争の仕掛け役と仲裁役を交互に使い分けることで、結構利益を得ることができたので、こうして利得をあげようというわけだ。

カール・マルクスは1866年、イタリア独立戦争をめぐる墺仏(フランス・オーストリア)戦争の中で、フォルスタッフの役割を演じた国としてプロイセンをあげている。そしてこう述べている。

「プロイセンは、一方では好戦的な熱情に平手うちをくわせておさえながら、同時に武器をとれと呼びかけなければならなかった。プロイセンは、武器を分配しながら、同時にそれを使用しないように警告しなければならなかった」(マルクス「とりちがえ」『マルクス=エンゲルス全集』大月書店、13巻、458ページ)。

 

アメリカのバイデン政権は、ウクライナ戦争が始まった当初から、19世紀のプロイセンの役割を担ってきた。戦争の拡大を憂慮しつつ、一方で強力な武器供与と資金援助を行ったのである。

もちろん、最初は短距離ミサイル、そして強力な戦車、そして強力な飛行機といった具合に小出しであった。それは仲裁役も兼ねていたからだ。

関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事