そのたびに、戦局が変わるのではないかと期待しつつ大勝利に浮かれ、やがて戦局が悪化すると、ウクライナの好戦的態度を和らげつつも、またより強力な武器を提供し、この戦争は負けるわけにはいかないと、挑発していった。
こうしてだらだらと続く戦争は、1000日が経過した。ヘンリー8世の時代を描いたリチャード・バートン主演の映画『1000日のアン』(1969)ではないが、1000日目に、ことは大きく動いたのである。
開戦1000日目に動いた戦局
第1次世界大戦の停戦の終戦記念日アーミスティスの11月11日を連合諸国は祝いつつ、なんとその後に、ウクライナにさらに強力な武器の使用を許可したのである。敗北濃い戦線の打開なのか、ロシアが西欧へのガス供給を完全ストップしたことへの反抗なのかはわからない。
すでに8月、ロシア領クルスクへウクライナ軍が侵攻したとき、ロシアのプーチンは警告を発していた。ロシア領内へNATO(北大西洋条約機構)軍の攻撃が行われる場合、NATO軍への核攻撃もありうると。
NATO軍のロシアへの攻撃とはいっても、それを判断するのは難しい。武器供与や資金提供だけでは、NATO軍の侵攻といえないからである。当然ながら、義勇兵やウクライナ軍への軍事指導者はウクライナに大勢入っている。しかし、それは直接ロシア攻撃に参加しているわけではない。
しかし、今回バイデン政権が使用を許可した、長距離地対地ミサイルATACMS(Army Tactical Missile System=エイタクムス)は、これまでの武器供与とは違う。すでにレームダック(死に体)となっているバイデン政権が、「イタチの最後っ屁」として供与する土産物としては、信じられないほど大きなものだといえる。
ATACMSは、艦艇や衛星を使ったミサイルであり、ウクライナ軍単独では発射不可能なシステムである。だから、プーチンは、ウクライナがこれを使用するとNATO軍の参加とみなすと発言し、核攻撃も辞さないと警告したのである。
事態はさらに進展する。早速ウクライナは、それをロシアの弾薬庫に数発打ち込んだのである。ロシアは、これに対して、ATACMSだと断定し、核攻撃およびNATO軍への攻撃を開始する用意があるとして、核兵器の使用基準緩和の文書にサインしたのである。
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