戦争を引き起こす2つの「戦争火山帯」に注目せよ 西欧秩序が揺らぐと戦争が起きる理由とは
世界は今や戦争の時代になったのだろか。ウクライナ戦争も終わらないうちに、イスラエルとガザでまた戦争が始まっている。2023年9月にも、アゼルバイジャンとアルメニアの緩衝地帯になっているナゴルノ=カラバフでも戦闘があった。
いずれも偶然に起こっている戦争ではない。それぞれの地域事情の違いはあるが、すべて共通した原因から起こっている。それはアメリカを中心とする西欧圏と、それに対抗する新勢力ロシアと中国との戦いであることだ。
アメリカと新勢力との戦い
アメリカを中心とする世界は18世紀から覇権をとった西欧圏であり、現在までの世界秩序を構築した勢力である。要するに世界の価値基準を作り上げているのは、西欧だということだ。
アメリカは1991年のソ連崩壊以後は、唯一の勢力として世界に君臨し、グローバル資本主義という武器によって世界秩序を完全に支配してきた。それは〈帝国〉とも呼ばれた。
世界秩序を決定づけるもの、それは経済においてはIMF(国際通貨基金)経済体制、軍事においてはNATO(北大西洋条約機構)体制、政治においては世界政治を牛耳るアメリカという〈帝国〉による単独覇権主義である。
他方は、ベルリンの壁崩壊後、IMF世界資本主義市場に組み込まれていった旧社会主義圏であり、そしてそれが30年以上の時を経て経済、政治、軍事において再び勢いをつけてきた勢力である。
この2つの体制が衝突しあう場所こそ、今、戦争を引き起こしている地域である。ロシアとEUとの間にある細長い南北の線が、まず第1の戦争火山の地溝帯だ。上からフィンランド、バルト3国、ベラルーシ、ウクライナ、そしてコーカサスのアルメニア、アゼルバイジャン、そしてバルカン半島のセルビア、コソボ、スルプスカ共和国(ボスニア・ヘルツェゴビナ構成国)を通り、トルコに抜け、イラク、シリア、レバノン、イスラエル、パレスチナに至るラインである。
この対立線は、コーカサスから西にイラン、アフガニスタン、パキスタン、インド、そして南シナ海の南沙諸島に至る第2地溝帯を形成している。この戦争火山の第2地溝帯は、南沙諸島から北に上り台湾海峡、南北朝鮮からサハリンへ抜けている。
日本は、環太平洋火山帯の真上にいるように、この東西対立の大地溝帯の真上に位置している。それはとても不幸なことである。
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