戦争を引き起こす2つの「戦争火山帯」に注目せよ 西欧秩序が揺らぐと戦争が起きる理由とは

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現在、このウクライナ戦争という代理戦争も、どうやら終局が見えてきたともいえる。2023年6月4日から始まったウクライナ軍の総攻撃はほぼ失敗となり、現在戦局はロシア側が圧倒的に有利な状況になっている。

2023年5月のロシア軍によるバフムート攻略は広島サミットのときであり、そのとき停戦と交渉のチャンスをロシア側はG7諸国に送っていたともいえるのだが、G7はウクライナの戦争継続を決め、その直後、ウクライナ軍の総攻撃が始まった。

ロシアはすでにウクライナ軍の弱体化により、オデッサ(オデーサ)とハリコフ(ハルキウ)を含むドニエプル(ドニプロ)川の左岸をロシアの領土にすることすら主張している。そのまま戦争を継続すればさらに多大なる損失を蒙るかもしれないウクライナは、今度は停戦を受ける覚悟をしなければならないのかもしれない。

現状打開の光明としてのガザ問題

しかしその条件は、ウクライナ領土の大幅縮小、NATOから独立した中立化、軍事力の大幅削減という煮え湯を飲まされるだろう。そして領土は大幅に縮小させられる可能性がある。

しかもポーランドやスロバキア、そしてハンガリー、ルーマニアといった国も、旧国土であったウクライナの西側を要求する可能性もないわけではない。いよいよゼレンスキー政権は、国家存亡の危機の中、停戦か戦争継続かの決断を迫られざるをえないといえる。

こうした中、ガザ地区のイスラエルへの攻撃が起きた。2023年7月末に西アフリカのニジェールで起こったクーデター(革命ともいえる)でフランス軍の撤退が始まり、9月にはアゼルバイジャンによるナゴルノ=カラバフの事実上の領土拡張が進んだこともあり、西側勢力は現状打開の光明をどこかに探していた。それがイスラエルのガザ問題でもあったともいえる。

ガザに対するイスラエルの経済制裁は長く続いており、そのこと自体が人権問題を含む大きな問題であった。イスラエルのネタニヤフ政権は、憲法改正(日本の憲法のような憲法ではないが)による宗教国家を目指そうとした。

イスラエルでは最高裁判所の権限が強いがその権限を弱め、政治にユダヤ教の律法を持ち込もうというのだ。憲法が宗教化すれば、ユダヤ教徒でないものは、それが理解できないため、国家の成員ではなくなる。

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