"音響の名門"パイオニアの「台湾傘下入り」が秘める《車のスマホ化》という希望と《経済安保》のリスク
パイオニアのケースも、まさにこの「もったいない」を強く感じさせるものだ。積み上げられた「世界初」「業界初」の技術や、顧客との信頼関係といった無形の資産が威力を発揮できなかったのではないか。
台湾企業との提携で見落とせないポイント
台湾企業による日本企業買収が話題になると同時に、日本と台湾の経済的・技術的連携は近年強まる傾向にある。
例えば、世界初で世界最大の半導体受託製造企業(ファウンドリー)であるTSMC(台湾積体電路製造)は、熊本に新工場を建設し日本国内における半導体サプライチェーンの強化に貢献している。
NTTと台湾の大手通信事業者である中華電信は2024年8月29日、世界初の国際間IOWN APN(オールフォトニクス・ネットワーク)の開通を発表した。NTTが推進する「IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想」は、光技術を基盤とした従来の電子技術(エレクトロニクス)から光技術(フォトニクス)にシフトし、より低遅延、低消費電力、大容量・高品質のネットワークを実現しようというものだ。
買収、経済的・技術的連携の別を問わず、台湾企業との関係は経済安全保障を抜きにしては語れない。
台湾と中国の間では、文化的・言語的な近さを背景とした人的交流が見られるが、現在の両岸関係を反映し、一定の制約の下で行われている。とはいえ、中国の「グレーゾーン戦略」が指摘される中、完全な情報流出を防ぐのは容易ではないと懸念する声も聞かれる。そこで、多くの日本企業は台湾企業との提携において、情報管理体制や契約内容を厳格化し、このようなリスクへの対策を講じているのが実情だ。
今回のパイオニアをめぐる買収は、日本ののれん(ブランド)を外国の家(台湾企業)の軒先につるすことになった、元・急成長企業を対象にした好個のケーススタディーになることだろう。
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