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<富士フイルムやAGCも>新薬開発の裏で沸き起こる、バイオ医薬品の「CDMO」覇権争い――国内外の製薬会社がこぞって頼る「黒子」の正体とは?

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富士フイルムはアメリカにCDMOの新工場を設立した(記者撮影)

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富士フイルムが総額1兆円超を投じ、挑むのは世界の「CDMO」市場だ。医薬品の開発から製造までを受託する事業のことで、高成長が続く「バイオ医薬品」を主戦場に、世界規模で拡大している。
スイスのロンザ、中国のウーシ―・バイオロジクス、韓国のサムスン・バイオロジクスなどが先行する中、富士フイルムは日本勢としてどのような存在感を示せるのか――。アメリカで立ち上げた最新工場のルポや、キーマンへのインタビュー、市場の動向分析を通じて、富士フイルムの勝算を探る。(10月30日配信予定)

約7兆円――。これは2024年に世界で最も売れた薬、ノボノルディスクの糖尿病治療薬「オゼンピック」の売上高だ(458億米ドル、IQVIA調べ)。2017年にアメリカで承認された新しい薬だが、急成長を遂げている。今、こうしたバイオ医薬品が売上高上位に躍り出ており、各社の開発競争が激しい分野だ。

新薬開発競争の舞台裏で、静かに存在感を高める産業がある。医薬品の開発から製造までを一手に担うCDMO(医薬品開発・製造受託機関)だ。2025年のCDMO市場(低分子やワクチン除く)は約2兆~3兆円と推定され、2030年までに年平均で13%成長が見込まれ、バイオ医薬品の市場(年率9~10%成長)を上回るペースとなっている。

CDMO急成長の背景には、冒頭のバイオ医薬品の台頭に象徴されるように、医薬品の製造工程が複雑化しているという事情がある。

難易度高い「バイオ医薬品」の製造方法

かつて製薬業界では、研究から製造までを自社で完結させるのが一般的であった。だが、新薬開発費の高騰や、モダリティ(医薬品の形態や仕組みの種類)の多様化が変化を及ぼす。1990年代には、錠剤型の低分子医薬品で製造外注(CMO)が定着していたが、2000年代に入り製造方法が複雑なバイオ医薬品が登場すると、構図は一変。製造のみでなく、開発までも担えるCDMOが不可欠の存在となった。

バイオ医薬品は、化学反応で合成される低分子医薬品と異なり、生きた細胞がつくり出すタンパク質をもとに製造される。代表的なのは、がんや免疫疾患などに有効とされる抗体医薬品だ。

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