キヤノン「1651億円減損」医療機器事業の挽回策 本体との一体化でメディカルの組織を作り変える
2016年に6655億円で買収し子会社としたキヤノンメディカルシステムズ。キヤノンは医療機器を事業の柱とすべく、その改革に乗り出す。

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「2025年内に体制構築にメドをつけ、早期に営業利益率10%を実現させる」
キヤノンの御手洗冨士夫会長兼社長CEOは、3月7日の経営方針説明会で意気込みを語った。6655億円の巨額買収から8年。ついにキヤノンが医療機器事業のテコ入れを宣言した。
医療機器事業の主体は、2016年末に東芝から買収したキヤノンメディカルシステムズ(旧・東芝メディカルシステムズ)。富士フイルムと熾烈な争奪戦を繰り広げ、買収額は6655億円に上った。CT(コンピューター断層撮影)で国内トップシェアを握る同社を複合機やカメラに次ぐ、新たな成長柱として育ててきた。
御手洗会長が述べた体制構築とは、キヤノンメディカルとキヤノン本社の組織、人材、ノウハウを統合することで、グループ全体のシナジー効果を最大化する改革を指す。すでに昨年2月に組織や拠点の再編、調達・生産・物流や開発体制の改革を行う「メディカル事業革新委員会」を設置した。
これまで御手洗会長は基本的に、買収した会社の経営は各社に任せる方針を掲げてきた。キヤノンメディカルについても、東芝時代からの体制を尊重してきたといえる。だが今後は、キヤノンが長年培ってきた品質管理やコスト削減のノウハウを注入するなどして一体化していく。
減損の背景に「中国政府の反腐敗運動」
キヤノンが1月末に発表した2024年12月期決算(米国会計基準)は、売上高が約4.5兆円となり、リーマンショック前に記録した過去最高額を超えた。実に17年ぶりの更新となる。2026年を最終年とする中期経営計画の売上高目標も1年前倒しで達成した。
「最高の決算だった」。御手洗会長は東洋経済の取材に自信をにじませながら語ったが、営業利益は2797億円で前期比25.5%減の大幅減益。1月末の通期決算発表まで示していた4555億円(前期比21.3%増)という計画から大きく下振れした。
売上高が再び成長の軌道を描きはじめた一方で4年ぶりの減益。元凶となったのが、医療機器事業でののれん減損損失1651億円の計上だ。キヤノン史上最高額の減損損失となった。そもそも医療機器事業でののれん額は、キヤノンメディカルの買収により4920億円積み上がり、2023年末時点では5656億円だった。
巨額減損の背景にあるのは、近年の医療機器業界における市場環境の悪化だ。円安、原材料価格の高騰、賃上げや物価上昇に伴う経費増で日本国内の医療機関の経営環境が悪化している。さらには成長が期待されてきた中国市場の急失速が想定外の要因として重なった。
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