有料会員限定

〈インタビュー〉"作りにくい抗体医薬"の量産目指す…富士フイルムのCDMOキーマン明かす「建設中のアメリカ工場で大型受注を獲得できた理由」

✎ 1 ✎ 2 ✎ 3 ✎ 4
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

有料会員限定記事の印刷ページの表示は、有料会員登録が必要です。

はこちら

はこちら

縮小
富士フイルムの新工場のお披露目には、富士フイルム バイオテクノロジーズのラース・ピーターセンCEO(写真左から2番目)、ノースカロライナ州のジョシュ・スタイン知事(写真中央)らが駆けつけた(記者撮影)

特集「沸騰!医薬品CDMO 富士フイルムの勝算」の他の記事を読む

新薬開発のスピードが問われる中、製薬企業の足元を揺るがすのがサプライチェーンの問題である。パンデミックを契機に供給の脆弱性があらわとなり、さらにトランプ関税の影響で国内生産への圧力が高まりつつある。
富士フイルムがノースカロライナ州で総額3800億円規模を投じるバイオ医薬品工場が、稼働に向けて準備を進めている。驚くべきことに、工場完成前の段階でジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)やリジェネロンといった世界の製薬大手と数千億円規模の長期契約を次々と発表。合算して70億ドル(約1兆円)規模の受注が積み上がっている。
立ち上げ中の工場にもかかわらず、なぜメガファーマからの契約を獲得できたのか。富士フイルムでCDMO事業を率いる飯田年久氏を直撃した。

大型契約は「うれしい想定外」

――富士フイルムがバイオCDMOビジネスに参入したのは2011年。当時、ここまでの事業規模まで成長すると見ていましたか?

工場が立ち上がる前にもかかわらず、製薬大手のJ&Jやリジェネロンが数千億円規模の長期契約を結んでくれた。よい意味で想定外だった。

通常ならばFDA(アメリカ食品医薬品局)の承認が取れた稼働中の工場に委託するのが安全策とされるが、よくぞこれほどの大型契約を決断してくれたなと思う。ノースカロライナ拠点は製造棟の4棟のうち3棟まで契約が決まっており、残るのは1棟だけ。キャパシティが埋まるのは時間の問題だろう。

2011年の参入当時は、ここまでの規模感やスケールでの事業を想定していなかった。当社が2019年にバイオジェンからデンマークの製造拠点を買収してから、大型タンクでの受託に本格的に参入した。デンマークのビジネスが軌道に乗り、抗体医薬品の需要が強いと確信を得たことが大きい。

ーー製薬大手(メガファーマ)は自社の生産設備にも投資しています。どのような製品や工程を受託するのですか。

確かに製薬大手は開発から治験、商業生産の初期段階までは内製で立ち上げる傾向がある。その先は数量が伸びた分をCDMOに任せるケースが多い。また、1つの適応症で承認を取得した後に、他の疾患にも適用拡大されて患者数が増えると、安定供給のために委託するケースもある。

次ページ新工場はトランプ政権の影響?
関連記事
トピックボードAD