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住友ファーマ合弁CDMOが「トップランナー狙う」成長戦略と市場の行方→開発で出遅れた日本のバイオ医薬、CDMOで巻き返しできるか?

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S-RAMCOのCDMO拠点。世界初のiPS細胞製品の商用製造を目指している(S-RAMCO提供)

特集「沸騰!医薬品CDMO 富士フイルムの勝算」の他の記事を読む

富士フイルムが総額1兆円超を投じ、挑むのは医薬品の開発から製造までを請け負う「CDMO(受託開発・製造)」事業だ。中でも成長著しいのが、生物由来の成分を活用した「バイオ医薬品」である。
スイスのロンザ、中国のウーシー・バイオロジクス、韓国のサムスン・バイオロジクスなどが先行する中、日本勢はどのような存在感を示せるのか。アメリカで立ち上げた最新工場のルポや、キーマンへのインタビュー、市場の動向分析を通じて、富士フイルムの勝算を探る。
【配信記事】
10月29日(水)  富士フイルムも参戦!バイオ薬「CDMO」覇権争い
10月30日(木)〈現地ルポ〉米国新工場で富士フイルムが狙う「医薬のTSMC」
10月30日(木)〈インタビュー〉富士フ「建設中の米医薬工場」で受注相次ぐ理由

世界のCDMO市場は大手による寡占状態にも見えるが、実はまだ今後も成長を狙える領域が残されている。

2000年代以降、創薬の主戦場が低分子医薬からバイオへと移った。抗体や成長ホルモン、インスリンなど生物由来の成分を基にするバイオ医薬品は、いまや世界の医薬品売り上げの半分以上を占めるまでに成長。今後も市場の拡大が見込まれている。

バイオ医薬品の中でも現在の主流は、がんや自己免疫疾患などに使われることの多い「抗体医薬」だ。イギリスの調査会社エバリュエートによると、2024年時点で抗体医薬がバイオ医薬品の中で占める割合は半数超となっている。

副作用を抑えつつ高い効果を発揮できることから、世界中で需要が拡大している。製造技術の成熟度も進み、ロンザやサムスンバイオ、富士フイルムは大規模な培養設備を持ち、量産体制を確立している。

ただ抗体以外のバイオ医薬品の多くは、まだ発展途上にある。製薬業界で「モダリティ」と呼ばれる薬の製造方法・技術は多種多様。CDMOにとっては、製薬企業がどの技術に注力しているかを見極めることが戦略上重要となっている。そしてここに、日本企業が世界で存在感を示せる余地がある。

再生・細胞医療品を扱うCDMO

国内で存在感を高めているのが、富士フイルムのほかAGC、宝酒造グループのタカラバイオ、そして住友ファーマと住友化学が設立したCDMO「S-RACMO(エスラクモ)」などのCDMOだ。中でも2020年にできたばかりのS-RACMOは、再生・細胞医療分野で先行する。

同社の土田敦之社長は「抗体医薬のCDMO市場は完全に出来上がったが、細胞医薬は黎明期。世界でもトップランナーを狙える領域だ」と話す。

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