
アメリカのトランプ大統領による関税政策の概要が徐々に見えてきた。
1期目のトランプ大統領は、「貿易赤字=悪」という強い思想のもと、貿易赤字を大幅に削減すべく、最大の貿易赤字相手国である中国と「米中貿易戦争」を展開した。相手が報復関税を課すなら、さらに倍返しで対抗するという強硬なやり方で、米中貿易合意に結びつけた。
たしかにアメリカの対中貿易赤字額は減少したものの、貿易赤字全体は減少しなかった。これは経済学的には当然のことであり、アメリカ人の貯蓄と投資行動が変化しなければ、対中貿易赤字が減少しても、それはほかの国の貿易赤字に振り替わるにすぎないからだ。
実際にアメリカの対中貿易赤字は2018年と2023年の比較で32%減少した一方、対韓国の貿易赤字は+192%、対ベトナム+177%、対インド+93%、対メキシコ+78%など、大きく増加している。
2期目のトランプ政権では、こうした反省を踏まえ、関税の目的は変化している。主に以下5点の目的がありそうだ。
②貿易赤字削減への関税
③経済安全保障面での関税の活用
④アメリカの国内政策の財源
⑤国際的なサプライチェーンの流れを変化させ、アメリカに投資を引き込みつつ、アメリカの製造能力を改革
例えば、最初にメキシコやカナダ、中国に実施した不法移民問題や薬物を理由にした関税賦課は、③の経済安全保障を理由としたものだ。ロシアに対し、ウクライナ戦争停止の条件を承諾させるための関税は、①の相手国の譲歩を引き出す脅しの関税だ。
そして市場が注目してきた相互関税は、②の貿易赤字削減と④の国内政策の財源が主目的となる。自動車関税など特定品目に対する関税は③、④、⑤を目的としているだろう。
さて、関税政策の中心となる相互関税が発表された。すべての輸入品に一律10%を賦課するとともに、国・地域ごとに異なる税率を上乗せするとし、日本は合計24%に設定した。まだ発表直後であるが、市場が想定していたより厳しい内容になった。
トランプ政権は相手国がアメリカに課しているとする関税率を、非関税障壁を含めて提示したが、その計算根拠は極めて不透明だ。ただし、これがそのまま適用されることはなく、ここが最大限の関税率として、各国との交渉がスタートする。場合によっては、予定されていた関税率の引き下げラッシュの可能性もあるため、今後の動向に注目したい。
市場は「影」の部分ばかり注目
一方、上記の5点の中で見逃せないのが⑤を目的とする関税である。
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