
アメリカのドナルド・トランプ大統領が意気揚々と「相互関税政策」を打ち出したのは4月2日のことだ。
だが、世界の株式や債券などの市場は大混乱に陥っている。ほぼ全地域・全品目に対する一律関税が10%賦課されることに加えて、国ごとに貿易赤字などを理由に関税が上乗せで課され、EU(欧州連合)は20%、日本は24%など、多くの大国や地域に対して、大幅な関税が賦課されることになった(その後、トランプ政権は9日、一部については90日間の一時停止を発表)。
懲罰的政策で関税率は1930年代と同じ水準まで上昇
貿易相手国の高い関税率への対抗として「相互関税」を課すというのは表面上のフレーズにすぎない。実際には、貿易相手国に対して、ほぼ一律に懲罰的な関税を課す驚愕の政策である。アメリカの平均関税率(関税収入/輸入)は約20%と、ジャンプする格好で上昇するとみられる。現在2%台の関税率が、1930年代と同様の水準まで上昇すると見込まれ、歴史的な政策転換である。
スコット・ベッセント財務長官は、GDP成長率3%を実現しつつ、財政赤字の国内総生産(GDP)比3%に削減、そして大幅な原油増産の3つを、トランプ大統領に提言したとされている。経済成長を実現させるためには、適切に金融財政政策が行われることが大前提になるが、実際には大規模な関税政策だけが早々に始まる緊縮的な経済政策が発動される。ホワイトハウスの中での、ベッセント財務長官の地位は実際にはとても低いのではないか。
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