──7月の日米関税合意には、日本からアメリカへの5500億ドル(80兆円強)の投資が含まれていました。日本からみた場合のメリットはあるのでしょうか。
鈴木 5500億ドル投資の枠組みは良好な2国間関係を象徴しているが、実態は複雑な力学が絡んでいる。この枠組みは、日米双方の代表で構成される協議委員会が日本の投資提案を選定し、最終的にアメリカの大統領が決定するという構造を持つ。基本的にアメリカ側の利益が強く反映された仕組みで、日本もその中で最大限のメリットを引き出そうとしている。
日本企業がアメリカに投資する動機としては、サプライチェーンの強靭化、エネルギー供給の安定化、あるいは小型モジュール炉(SMR)のような新技術の共同開発などがある。ただし、最終的には利益の90%がアメリカ側に入る仕組みになっており、日本にとって全面的に有利なものではない。
一方で、日本が単なる「ATM」のようにアメリカにお金を差し出すだけの構図でもない。利害のせめぎ合いはあり、全体としてアメリカ有利に傾いていながらも、日本側が得られる利益は確実に存在する枠組みとなっている。




















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