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帝国を降りてゆくアメリカ、覇権国なき空白の危うさ。想定外のショックに脆弱な世界経済

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米ドル紙幣
日本から見れば「円安・ドル高」だが、世界的にはドル安が進んだ(写真:Getty Images)

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アメリカのトランプ大統領に振り回され続けた世界。片や、実力未知数の高市政権に運命を託す日本。2026年はより大きな混乱に見舞われるのか。本特集では国内外の政治・マクロ経済を大胆予測する。

トランプ大統領が2025年4月に発表した相互関税は、アメリカが覇権国から降り始めたことを意味する。

歴史的に帝国とは域内の経済活動が活発化し交易が拡大することでメリットを得る存在だ。ところがトランプ関税は全体のパイを大きくするのではなく、各国の経済活動や自由貿易に縮小圧力をかける。このような収奪的な動きは帝国の典型的な末期症状といえる。

なぜアメリカはこれほど法外な関税を課すのか。米大統領経済諮問委員会(CEA)のスティーブン・ミラン委員長はこう説明した。アメリカが運営する国際安全保障や国際金融、自由貿易に各国はフリーライド(ただ乗り)しているから、コストを負担すべきだと。

実際にはアメリカが通貨覇権から得ているメリットは極めて大きい。しかし、覇権の利得はアメリカ国内でITや金融のグローバリストに集中している。製造業が疲弊する地域経済やそこに暮らす労働者には届いていない。本来はアメリカ国内でITや金融部門に課税し、再分配すればいいはずだが、あまりにも分断が広がりすぎて再分配が困難になっている。

再分配できず収奪

アメリカの覇権が揺らいできたのは、中国をはじめ新興国が台頭したからであるように見えるが、実は再分配など国内の社会制度に対する正当性や信認が揺らいだこともある。そこでトランプ政権は他国から収奪して国内の困難を除こうとしている。日本をはじめ諸外国に投資を求め、製造業を復活させようとしていることが典型だ。

アメリカが覇権を降りるとき、何が起きるのか。第1期トランプ政権下で米中対立が始まった17年に取り沙汰されたのが「トゥキディデスのわな」だ。覇権国と新興国が衝突し戦争に至ると懸念されたが、同年に国際政治学者ジョセフ・ナイは、真の危機とはむしろ「キンドルバーガーのわな」、すなわち覇権国の不在だと論じた。

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