
アメリカのトランプ大統領は4月2日を「解放の日」と称し、広範な関税政策を遂行している。内容が修正されるたびに株価や米長期金利が乱高下し、金融市場が揺さぶられている。
目の前で起きている事態を直感的に表現すれば、戦後国際秩序の不可逆的な崩壊だ。それも、トランプ氏が原因で崩壊しているのではなく、世界的に格差問題が広がり既存の秩序が立ち行かなくなった結果としてトランプ氏が登場したというのが実態ではないか。
トランプ氏が仕掛ける関税戦争は「マールアラーゴ合意」の布石とみる。覇権国家から転落しかけるアメリカが最後の力を振り絞ってマールアラーゴ合意なる恫喝を仕掛けようとしている可能性が高い。だとすれば、現下の世界の混乱は序章に過ぎない。
第2のプラザ合意「マールアラーゴ合意構想」
関税戦争を仕掛けるトランプ氏の思考を読み解くうえで、目下、金融市場で注目されているのがマールアラーゴ合意構想だ。この3月に大統領経済諮問委員会(CEA)の委員長に就任したスティーブン・ミラン氏が2024年11月に公表した論文「グローバル貿易システム再構築のためのユーザーズガイド」で提唱した、仮想の多国間通貨合意の枠組みのことである。
ミラン氏は「持続的なドル過大評価」(ドル高)に起因する経済的不均衡の解消と、国際貿易システム改革に向けたロードマップを提示している。無軌道に見えるトランプ氏の関税政策は、実はミラン論文がマールアラーゴ合意として現実化しているのではないかと金融市場では目されている。
1985年、対日貿易赤字を解消したかったアメリカは、ニューヨークのプラザホテルで日本政府などと協議し、ドル安誘導に向けた通貨協定「プラザ合意」を結んだ。当時もアメリカの狙いは国内産業競争力の強化だった。プラザ合意によって日本は円高に振れ、日本企業の輸出競争力は低下。その後の日本経済停滞の要因となった。
トランプ氏がフロリダ州に所有する邸宅の名に由来しているマールアラーゴ合意は、「第2のプラザ合意」と称される。
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