雇い止めの発端になったのは、13年の改正労働契約法の施行だ。通算雇用期間が5年を超えた有期雇用の労働者は無期雇用への転換を申し込めるとする法律で、労働者が申し出た場合、無期雇用契約に切り替えることが雇用主に義務付けられた。ただし、研究の成果を出すには時間がかかることから、大学や研究機関の研究者や技術者は、権利を手にするまでの通算雇用期間が5年ではなく特例として10年になった経緯がある。
本来は無期雇用への転換を促すための改正法だが、現実には多くの大学や研究機関では、それを回避するための雇い止めが多発した。要は、10年を迎える前に解雇することで、無期転換権を得られないようにしたというわけだ。
100年以上の歴史を持つ自然科学の総合研究所、理化学研究所も例外ではなく、大規模な雇い止めが行われた。改正労契法の施行からちょうど10年となる23年3月末には、380人もの任期制職員が雇い止めの対象となった。そのうち203人は前述の「10年特例」の対象者で、残りの177人は対象者の離職に伴って消滅する研究チームのメンバーだった。
研究代表者57人が雇い止め対象に
筆者は数年前に当時の同僚と理研の雇い止めについて初めて取材した際、対象とされた研究者の中には、大型の公的研究費によるプロジェクトに携わる人物もいると知り、気になっていた。



















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