
アメリカの6月FOMC(連邦公開市場委員会)は、ほぼ市場の予想通りとなったが、気になる点がある。
政策金利は据え置かれ、FOMC各メンバーのFF(フェデラルファンド)金利見通しを示す「ドットチャート」では、年内の利下げ回数が2回のまま据え置かれた。市場では年内の利下げ回数は1回に減少すると見込まれていたことから、この点についてはややハト派的に思われるが、この見通しをそのまま捉えるわけにはいかない。
年内に「利下げなし」を見込む参加者は、前回(3月時点)の4人から7人に増加しているほか、2026年の利下げ見通しは2回から1回に修正されており、相応にタカ派的な内容と感じる。
経済見通しについては、下図のように実質GDP成長率が減速し、失業率が緩やかに悪化する中、コアPCE(個人消費支出)はトランプ関税などの影響で一時的に上昇する展開が予想されている。これをスタグフレーション的な見通しと騒ぐ人もいるが、このレベルはスタグフレーションでも何でもない。こうした見通しのとおりになれば、米国株上昇の障害にはならないだろう。

FRBパウエル議長の意図
FRB(連邦準備制度理事会)のパウエル議長の記者会見では、これまでと同様に「アメリカ経済は堅調であること」「現在の金融政策は適切な位置にあり、関税政策を見極める時間的猶予があること」が繰り返された。また、今回は「Patient(忍耐強い)」という表現が使われなかった。この表現は通常、「少なくとも今後2会合は主要な政策変更を行わない」という意思表示に使われる言葉として知られており、意図的に使用しなかったのであろう。
今回のFOMCを受けて、株式市場や債券市場、為替市場も大きな動きはなかった。市場のFF金利予想にもほとんど変化がなく、10月から利下げ開始、12月に追加利下げの年内2回を織り込んでいる。
米国株は、中長期的には足元の不確実性が薄れていく中、アメリカへの投資加速、FRBの利下げサイクル再開、AIやロボティクスをはじめとする強力な産業革命の追い風などを受け、堅調に推移していくと見込む。
主要株価指数「S&P500」の現在の強気相場は2022年10月を起点としている。過去の強気相場は平均で5~6年程度継続していることから、2027年ごろまで上昇を続ける可能性は十分にあるだろう。ただし、短期的にはアメリカの経済成長鈍化に注目しておきたい。キーワードは「E・P・S」だ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら