地政学リスクが高まる中で、原油相場は反落し、天然ガス価格は急騰。背後で何が起きているのか。
原油と天然ガスの市場を取り巻く地政学リスクは一向に収束する気配を見せない。そうした中で、原油が今年の高値から2割も下落する一方、天然ガス相場は今年の安値の2倍に迫る勢いで上昇している。同じ地政学リスク下において、どうして正反対の動きとなっているのだろうか。
イランのミサイル攻撃に対して、イスラエルの報復がどこまでエスカレートするか、世界中が注視していたが、実際は極めて穏便なものとなった。最悪の事態を回避した原油相場は反落し、10月末時点のブレント原油価格は1バレル=72ドルで推移している。これは、従前の常識では考えられないほど静かな動きであり、油価の絶対水準から見ても安すぎる。
ブルームバーグで長年、商品相場をフォローするハビアー・ブラス氏は、原油トレーダーの世代交代により1970年代の石油危機や1980年代の中東紛争における長期にわたる需給逼迫の記憶が薄れつつある可能性に加えて、5つの環境変化によって市場が「戦争慣れ」していると説明する。
「戦争慣れ」をもたらした5つの環境変化
1つ目の変化は、アメリカが世界最大の産油国として台頭したことだ。かつて同国は原油輸入大国だったが、約15年前に始まった「シェール革命」により、今では日量150万バレルを輸出するようになった。このような状況変化は、中東が原油市場に与える影響力を大きく後退させている。
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