関税強化、移民政策、債務膨張、気候変動対策──。4つの観点からトランプ大統領再登板の影響を考える。
いささか拍子抜けするほど“あっさり”、ドナルド・トランプ大統領の再誕生となった。
「自分が大統領になれば24時間以内にウクライナの戦争を止める」との発言が有言実行となるのを心待ちにしつつも、各国の防衛支出が増える可能性や、本音ではドル安を選好するトランプ氏がどの程度の為替水準を妥当とするかなど、考えておくべきことは多い。クレジット市場の観点から、トランプ大統領再登板の影響を4点に絞って整理してみたい。
世界中でインフレを招くことになりかねない
第1に関税強化である。アメリカが中国との貿易に一律60%の課税をし、全世界との貿易には10%課税する場合を考える。関税を課されると、まず中国メーカーの製品販売が落ち込み(直接的影響)、グローバル・バリューチェーンを通じて中間財調達なども縮小する(間接的影響)。さらに、アメリカに輸入される中国以外からの商品も価格が上昇し、輸入品需要が落ちる懸念もある。
一方、原産国では関税回避のため、関税の直接的影響を受けないサプライヤーに貿易がシフトする可能性がある。貿易摩擦が長引くほど、代替国に恩恵がもたらされる効果もある。さまざまな経路をもって影響が出て輸入物価上昇という観点だけでも、世界中でインフレを招くことになりかねない。
成長率に関しては、BNPパリバの試算ではアメリカや中国には0.4%程度マイナスに効く。日本には0.3%強、欧州には0.2%程度のマイナスだ。主たるグローバル・バリューチェーンの役割を担っているアジア勢への影響も無視できない。とくにベトナムには0.6%のマイナスと大きな影響を覚悟する必要があり、台湾、タイ、シンガポールはそれに次ぐ。
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