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LNGは「クリーンエネルギー」なのか? アメリカの専門家が環境負荷の深刻度を指摘。「IEAは過小評価、移行エネルギーになりえない」

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アメリカのLNG施設から排出されるメタンの光学ガスカメラ画像(提供:Oilfield Witness)
天然ガスの採掘や輸送、液化などの過程で、強力な温室効果をもたらす物質であるメタンが環境中に排出され、地球温暖化を一段と深刻化させている──。ここ数年、メタンによる環境負荷が世界的に大きな問題として認識されるようになっている。
そのきっかけとなったのが、アメリカ・コーネル大学のロバート・ハワース教授による一連の研究だ。ハワース教授が2024年に発表した研究論文によれば、アメリカ産の液化天然ガス(LNG)からの温室効果ガスの排出総量は、石炭のそれを33%も上回るという。ハワース教授による研究成果はアメリカのバイデン前政権の政策立案にも影響を与え、2024年のLNGの新規輸出許可一時停止につながったと指摘されている。エネルギー業界の反発は大きく、大論争を巻き起こした。
「LNGはクリーンな燃料でも、温室効果ガスネットゼロ(脱炭素化)へのトランジション(移行)燃料でもない」と指摘するハワース教授に、その理由について聞いた。

──LNGの環境負荷への関心が高まっています。

LNGについて検証する前に、天然ガスがクリーンな燃料であるか否かについて説明したい。この問題は25年ほど前からしばしば議論されてきた。一部は真実だが、全面的にそうだとは言えない。メタンを主成分とする天然ガスは、石炭や石油と比べて、単位熱量当たりのCO2排出量は少ない。石炭と比べると60%程度にとどまる。だからといって、天然ガスの温室効果ガスの総排出量が、石炭などほかの化石燃料と比べて少ないかというと、そうとはいえない。

天然ガスの温室効果は石炭と同等だ

──どういうことでしょうか。

アメリカは今では世界最大の天然ガス生産国になっている。その大半はフラッキング(水圧破砕法)によって採掘されたシェールガスで占められている。シェールガスの生産では強い圧力で岩盤を粉砕するため、多くのエネルギーを消費する。

他方、天然ガスの主成分であるメタンは最も温室効果が高いガスである。20年というタイムスパンで見た場合、メタンの温室効果はCO2の80倍以上もある。

シェールガスであれ、それ以外の在来型の天然ガスであれ、採掘の過程でガスの一部が燃やされずに大気中に排出されてしまう。アメリカでの現時点での推定では、生産量の2~4%ほどのメタンが燃やされずに大気中に排出され、非常に強力な温室効果ガスとなって環境に負荷を与えている。

LNGではない、通常の天然ガスのアメリカでの生産や利用の状況を見ると、(採掘から消費までのライフサイクルベースでの)温室効果ガス排出量は石炭と同等だといえる。燃やしたときのCO2排出量は少ないが、採掘過程でのエネルギー消費量が大きいうえ、メタンが環境中に排出されることにより、結果的に石炭と同等の温室効果がある。

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