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LNGは「クリーンエネルギー」なのか? アメリカの専門家が環境負荷の深刻度を指摘。「IEAは過小評価、移行エネルギーになりえない」

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──LNGの場合はどうでしょうか。

LNGも同じくシェールガスが原料だが、これをセ氏マイナス162度という極低温に冷却して液化するために大量のエネルギーを消費する。また、タンカーで輸送する際にも大量のエネルギーが消費されるうえ、メタンも排出される。私の研究では、アメリカから日本などに輸送されるLNGの温室効果ガスの総量は、石炭よりも33%も多いという結果となった(前出の論文参照)。

33%多いというのは、テキサス州やルイジアナ州などアメリカ南部から、日本や中国、ヨーロッパなどの輸出先までの温室効果ガス総排出量の平均値を示したものだ。

──前出のハワース教授の論文では、漏洩のみならず、天然ガスプラントからの意図的な放出もかなり多いとされています。また、同論文ではタンカーで輸送する際の不完全燃焼による排出も多いと指摘されています。

天然ガスを採掘する過程でのメタンの漏洩やプラントからの意図的な放出に関しての正確な数字はない。ただ、いろいろなデータを見ると、環境中に排出されるメタンの半分から4分の3は意図的に放出されているものだと考えられる。

量が多いのは、ベンティング(メタンを燃焼させずにそのまま大気中に放出)とフレアリング(メタンの燃焼)だ。

ガス設備から意図的にメタンを放出

──なぜそうしたことが行われているのでしょうか。

特に天然ガスの貯蔵や加工においては、安全上、一定量のメタンガスの放出をせざるをえない。ベンティングよりもフレアリングのほうが環境負荷は少ないが、フレアリングでも必ずしも完全燃焼されるとは限らない。

Robert W.Howarth/コーネル大学教授。地球システム科学者、生態系生物学者、生物地球化学者。硫黄、窒素、リン、炭素循環における人為的変化、地球規模の気候変動の影響、気候変動の一因となるメタン排出、エネルギーシステムと環境との相互作用など環境問題に取り組む。2011年にはシェールガスの温室効果ガスフットプリントに関する研究で、タイム誌の「重要な人物50人」の1人に選出。現在、ニューヨーク州気候行動評議会のメンバーを務める(写真提供:ハワース教授)

特に風があるとメタンの30~40%ほどが燃焼されずに大気中に排出されてしまう。現在のところ、これを解決する技術開発が行われているようには見受けられないし、そのような情報も伝え聞かない。

もう一つ、メタンの大気中への排出の原因となっているのが、ガス田からLNG加工施設へガスを送り届ける際の高圧のパイプラインからの排出だ。コンプレッサー(圧縮機)はガスを燃焼して駆動させているが、不完全燃焼によってかなりの量のメタンを大気中に排出させている。

パイプラインの保守・メンテナンスの過程でもメタンを放出している。というのも、溶接の作業をする場合、天然ガスがパイプの中に入っていると非常に危険なので、パイプラインからいったんガスを抜かなければならない。このブローダウンと呼ばれる操作が頻繁に行われ、無視できない排出源になっている。

次ページタンカーからのメタンの排出問題とは?
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